市民のための名古屋市会を! Ver.3.0

一人の名古屋市民が「地域委員会制度」「減税日本」に対する疑問をまとめるサイトです。(since 2011/3/3)

議会制民主主義の力!

 河村たかしが求めていた「市民税減税10%恒久化」は本日の名古屋市会、財政福祉委員会において否決された。おおよその模様は市民の有志によってこちらに動画が保存されています。

 もちろん本日、減税率を10%から7%に圧縮した修正案が提出され、その7%についても否決されたものである。

 減税率の圧縮に加え、均等割り部分(年額3,000円)についても「所得割が課税されないかた」については年額を1,000円に下げて、低所得者に対する対策を加え、また何等かの福祉施策を進めることを条件に公明党が修正案に乗るのではないかと報道されていたので、本日の財政福祉委員会での修正案提出と討議、及び採決は注目された。

 結果として公明党も7%修正案を否決し、10%の本案も否決された。
 これで河村は市民税減税10%を(今)任期中に見ることは無くなった。

 約束どおり名古屋港に沈めるのはハードなので、せめて水族館の前の入り江辺りで泳いでいただきたいものだ。
 また、元ボクシングチャンピオンの平仲氏が応援演説に加わった際には、減税が実現化できなかったら、平仲氏から殴ってもらうと約束したそうなので、それも実現してもらいたい。

 しかし、この修正案は酷かった。
 多分、一部の市民や報道は、既得権防衛に汲々とする議会が、最後まで頑迷に河村の改革に抵抗したというような論調を振り回す可能性がある。(中日新聞はどうやって河村を援護するのか、今から楽しみだ)
 けれども、この修正案を飲める者は居ない。

 まず、その成立が無茶苦茶だ。先週末に河村が突然「7%圧縮」を言い出した。この段階で完全にブレている。さらに12月2日の委員会答弁で「自分は言っていない」と直接聞いたという自民党の横井団長の発言まで否定してしまっている。これでは根回しどころの騒ぎではない。
 挙句の果てに、本日6日が修正案提出の最終日であったのに、昨日(5日)に至るも修正案の各派への提示が無かったそうだ。公明党には浅井団長が挨拶に行っている。
 本日の委員会における発言では、横井委員は昨日夜7時半まで自民党控え室で待っていたが接触が無かったそうだ。結局、自民党共産党にはそういった挨拶も無かったらしい。

 そして、修正案の原文が提出されたのは委員会の席上でということらしい。

 委員会の期日は本日が最終日なので今日中に意思表明しなければならない。それなのにその対象がその日の朝にしか出てこないのでは、いったい各会派はいつ精査できるというのか。

市長のための市会ではなく、市民のための名古屋市会を!-修正案(1)
市長のための市会ではなく、市民のための名古屋市会を!-修正案(2)
 左のイメージがその「修正案」だそうだが。

 何度も何度も何度も言っているが、自分に甘い、幼稚な河村の性格を減税日本ゴヤの市議たちは継承している。こうやって出してきた修正案に明白な間違いがある。
 この部分は、他にも問題となるので書き起こしてみよう。少々長くなるがご勘弁願いたい。

 4 個人の市民税の所得割(市税条例第32条の2の規定によって課する所得割を除く。)の納税義務を負わない者については、名古屋市市税減免条例(平成20年3月31日 条例第37号。以下「減免条例」という。)第2条の規定にかかわらず、その者に対して課する平成24年度以降の年度分の個人の市民税の税額(市税条例第32条の2の規定によって課する所得割の額以外の額とする。)から 1,700 円を減免する。ただし、減免条例第2第1項第3号から第8号までの規定を適用した場合に減免する額が 1,700円を超えるときは、この項の規定は適用しない。


 一読して一発で意味が判った人が居たら、その人が凄すぎます。

 「市税条例第32条の2の規定によって課する所得割」とは、「退職所得の課税の特例」です。低所得で所得割を課税されない人を指したいのですから、退職による所得割は規定から除外しようというわけです。
 また「減免条例の第2条」とは、減免を受ける様々な事由のことで。生活保護を受けたとか障害を負った、寡婦または寡夫、さらには災害による被害などをいう。一般的常識でみても、市民税負担を減免されるに値する不幸な事由が列挙されています。

 以上の説明を踏まえて、上の引用を簡単に言いなおしてみると。

 「減免条例第2条の規定にかかわらず、個人の市民税の所得割の納税義務を負わない者は、平成24年度以降の個人の市民税の税額から年額で 1,700 円を減免する。ただし、減免条例の既存の規定を適用した場合に減免する額が 1,700円を超えるときは(そちらの方が納税者にとって得なので)この規定は適用しない」

 となります。ここまで整理してみると、カンの良い方は「間違い」に気が付きましたか?

 報道では「均等割りが 3,000円から 1,000円に減額される」と書いてあったのに、そうは書いていないと思われるかもしれません。
 つまり、均等割り 3,000円に、元の条例案10%減税がかかっているので、 2,700円になっており、さらに所得割を課税されない事由がある方については、この2,700円から更に 1,700円を引いて 1,000円にしますよ。という事なんですね。

 ・・・・判ります?
 均等割り 3,000円について、一旦10%減額して、さらに条件が適合すれば 1,700円を引こうという規定ですけど。今回は、減税幅を7%にしようと言うのが全体のコンセプトの筈です。しかし均等割りの減額率だけ10%のままなのですか?
 ここも7%にして、2,790円 更に条件適合削減額が 1,790円じゃないと、一貫性が保てないのではないでしょうか?

市長のための市会ではなく、市民のための名古屋市会を!-NHK報道追記(12月7日):情報をいただきました。
均等割り減額について、NHKも7%削減された金額から減額されると思っていたようです。
NHKが報道に使った図は修正案の条文と異なってしまっています。


 単純なケアレスミスのように思えますが、他会派に真剣に根回ししたり、減税日本ゴヤの会派内で、ちゃんとした議論ができていればこんな恥ずかしいミスは生まれてきませんよ。(そもそも言っちゃ悪いが、減税日本のホームページにある文章も酷いものばかりですよね。この修正案の文章もその系譜に見事に入ります。これほど酷い文章と言うのは、結局読む人に敬意がない、尊重する気持ちがないという事なんでしょう。後にもその傍証が出てきますが、この他者を尊重しないという文化は、河村周辺では骨絡みのようです)

 この修正案がダメな理由を他にも並べてみましょう。
 1.そもそも「10%」という数字が公約であって、来年実施、早期実現が公約などではない。逆に公約には実施時期は明記されていない。
 2.「10%」実現でも財源は確保されていると強弁し続けてきた河村の言葉と食違う。(7%でも、財源措置がなされていない。まだ足らない。どころか、減税を丸々否決しても、それでも24年度歳入欠陥が発生する可能性まで指摘されている)
 3.つまり、減税が実現できないのは、どこまで行っても河村の怠慢の所為。
 4.その(河村にとって)重大な筈の減税比率を突然7%に変えてきた。「10%」で議論してきたが「7%」では財源等どのようになるか議論していない。もし、ここで賛成に回れと言うのであれば、ほとんど議論をせずに、精査をせずに目を瞑って丸呑みするに等しい。

 5.そして、何処までいっても課税対象者に対しての減税であって、そもそも非課税の低所得者層には恩恵はない。

 6.こういった均等割りの制度修正で、減税財源は1億円かかるという。その程度のインパクトの修正であるが、例えば平成22年度決算を見ると、法人税減税の減税額上位3社で6億円を超える減税がなされている。法人税に対する減税を制度修正した方が財源的にも公平性の議論からも早くないのか?

 7.この均等割りについては 3,000円を 100円にしてはというような議論が過去にもあった。しかしそれは「減額」であって、今回は所得階層について特に減額するために「減免」を使った。
 「減免」とは「地方税法の第三百二十三条(市町村民税の減免)」にその規定がある。
 その規定をみると「減免」の条件とは?特別な事由があり?予め条例に規定がある場合?市町村長は「減免」をすることができるとされている。それを受けて名古屋市の「減免条例」において様々な「事由」が列挙されている。
 そして、その第2条の5において「市長は、第1項各号に定めるもののほか、同項各号に類する事由がある者で特に必要があると認めるものに対しては、市民税を減免することができる」となっている。

 ・・・・どうなんでしょうか?
 ここで挙げられている事由と言うのが災害、障害を蒙った、寡婦または寡夫となった等々の後の県との関係の議論でも出てくる「一般常識として減免が許されるだろう事由」です。
 この「減免」を使って、市長が特定の人々に減税政策としての「減免」をした場合に、税の公平性。適法性が担保されるでしょうか?
 この規定によって均等割りが減額される市民はおよそ5万人と言われていますが。実は、所得割の課税額が免除の額よりも微妙に多く、300円程度課税されている方々が4万人程度居ると思われます。
 つまりこの境目の方々には、課税により所得の逆転現象が起きるのです。(1,000円程度所得が多いために所得割の免除を受けられる所得を超えたヒトには、均等割りの課税 2,790円がかかります)

 この件については横井委員から質問が発せられていましたが、山田委員は「許容範囲」というような回答でしたね。まあ、なんとも荒っぽい。「切捨て」の論理ですからね。

 7.5 「切捨ての論理」といえば、横井委員から「民」とは何か、「市民」「庶民」とは。様々な言葉が飛び交っているがその定義が曖昧である。という指摘を受けて、山田委員が回答の際に「こんな事は議論したくないのですが」と説明を投げ捨てるような発言をしていましたね。

 そもそも自分たちが持ち出した用語については、きちんと定義を詰めておくのは当然です。
 「民」であるとか「市民」や「庶民」の言葉ぐらい理解しているのが常識だ。とでも思っているとしたら、それは思い上がりというよりも勘違いです。これらの言葉については誰だって理解できます。けれども、例えば辞書を引いてみたって判りますが、これらの言葉には複数の解釈があるわけです。用語というものには様々な解釈が可能なわけです。
 自分たちが理解する言葉の解釈を、議論の相手もア・プリオリに理解していると思っているとすれば、それは幼稚な思い上がりです。(「ア・プリオリ」とは「自明なこと」というような意味です)
 そもそも自分たちが持ち出した用語については、きちんと定義を詰めておくのは当然です。そして、それらの言葉について説明を求められたのなら丁寧に説明するのが提案者としての責務です。

 それを「こんな事は議論したくない」とは、非常識にも程がありますし失礼です。

 と、いうか、こんな言わなくても良い言葉をなぜ口に出すのでしょうか?

 これは、ずっと以前、庶民連の会合において参加者のK氏が山田委員に怒ったケースと同じです。あの際に、なぜK氏が突然怒ったか、山田委員が理解をし、反省をしていればこういう大切な場面で失敗を生かすことができたのでしょうが、このまま減税日本ゴヤ、河村の周辺という独特で唾棄すべき文化の中で、甘やかされたまま癖が治らないとするならば、それは不幸な事です。

 話を戻しますが。
 課税による所得の逆転現象が起こり、それが適法性を欠いているとしたら、これは行政訴訟の可能性があります。市民、納税者から違法な政策を行って、いたずらに市民税を消尽したと追及される可能性があったのです。

 実際に、この点をついて訴訟を起すなら原告になるぞ!という人がいらっしゃいました。


 もしも訴訟となった場合、被告となるのは提案者になります。河村はこの訴訟リスクを怖れて、この修正案の提案者を無理にでも市議団にしたのでしょうか?

 さらに、それを察して委員会討議において「わざと」稚拙な対応を見せて否決に持ち込んだとしたら、ご立派です。(可能性は棄却しませんが、考えすぎでしょう)

 8.そして、大きく横井委員が追求した、地方税法第四十五条 「個人の道府県民税又は延滞金額の減免」の問題となります。市町村長が市町村民税の「減免」を認めた場合は、道府県民税についても同様の「減免」が認められるという規定です。
 つまり、名古屋で均等部分の「減免」が認められるのであれば、その対象者は県民税も同様に「減免」されるということになります。

 名古屋市議会が県民税の減免について規定できますか?

 「減免」とは、誰が見ても税の減免がふさわしいような、不幸な事由がある場合において認められるのであって、そのような事由があるから、市長が「減免」を認めれば知事も「減免」するだろうという規定な筈です。
 特定の市長や、特殊な理論によって構成された市議団が政治的意図によって、ある人の市民税均等部分を「減免」したり、またはしなかったりというような事は税の公平性からも許されれるとは思えません。

 また、横井委員はこの件について、愛知県に打診はしたのかと確認しました。上の動画ではおよそ40分ぐらいから始まります。
 最初、山田委員は確認の為に休憩を求めます。
 それ以降しどろもどろになりながら「県には確認を取れている」「河村市長が県に確認した」というような回答をしています。

 そもそも7%修正案は河村市長は関与していないと言うのに、なぜ河村市長が県との調整をするのか?

 また、山田委員は「100円議案の時にも県への影響がある」と言っていましたが、均等割りを100円にするという案については「減免」ではなくて金額自体を触りましたから、県への影響はありません。
 このしどろもどろのやり取り。山田委員が若い身空で、委員会の席において平気で口から出任せを言っているのとしたら、親は泣きますよ。

 まだ他にも幾つか修正案の問題点は出ていますが、これ以上はやめておきます。また、余りにも長くなりすぎましたので各法律の条文、条例は文末に追いやりました。余力のある方だけ見てください。(また、いつもの様な0.6%、0.42%の表記も割愛しました)

 当の横井委員のブログにコメントとして書きましたが。
 議論によって政治が動いた瞬間を見た気がしました。これが「政治」です。
 そして、これこそが議論によって事の是非を問う議会制民主主義の姿です。

 国会においては衆参のねじれによって政権運営が不安定なままで、力強い政治の姿が見えません。これに国民は失望をしているのだと思います。だからといって、既存政党を捨てて正体不明の地域政党を選んでみても変わりはしません。問題がそこに無いからです。大阪都とか、中京都とか。中身もない幻想に騙されても仕方がありません。
 本当に必要なのは現実の問題を掘り起こし、事実に即した議論を行い、政治的信条、価値観と、政策的論理性を提示しつつ実証的に議論していくという地道な作業です。
 今日の議論にはそれがあります。

 こういった議論こそが議会制民主主義の力、民主主義の可能性を示してくれるものだと思いました。


名古屋市市税条例 (昭和37年12月28日 条例第45号)
第8条
(1) 区内に住所を有する個人
(2) 区内に事務所、事業所又は家屋敷を有する個人で当該区内に住所を有しない者

(均等割の税率)
第12条 第8条第1号又は第2号の者に対して課する均等割の税率は、年額3,000円とする。

名古屋市市税減免条例(平成20年3月31日 条例第37号)

第2条 名古屋市市税条例(昭和37年名古屋市条例第45号。
以下「市税条例」という。)第8条第1号の市民税の納税義務者が、次の各号のいずれかに該当し、市長が必要であると認める場合においては、その者に対し、その者に課する市民税額からそれぞれ当該各号に掲げる額を減免する。
 :
 :
 5 市長は、第1項各号に定めるもののほか、同項各号に類する事由がある者で特に必要があると認めるものに対しては、市民税を減免することができる。
 :
 :
(退職所得の課税の特例)
32条の2 第8条第1号の者が退職手当等(所得税法第199条の規定によりその所得税を徴収して納付すべきものに限る。以下本款において同じ。)の支払を受ける場合には、当該退職手当等に係る所得割は、第13条第1項、第15条及び第23条の規定にかかわらず、当該退職手当等の支払を受けるべき日の属する年の1月1日現在におけるその者の住所が区内に所在する場合において、当該退職手当等に係る所得を他の所得と区分し、本款に規定するところにより課する


地方税法(昭和二十五年七月三十一日法律第二百二十六号/
最終改定:平成二十三年八月三十日法律第一〇五号)


(個人の道府県民税又は延滞金額の減免)
第四十五条  市町村長が個人の市町村民税又はその延滞金額を減免した場合においては、当該納税者又は特別徴収義務者に係る個人の道府県民税又はその延滞金額についても当該市町村民税又は延滞金額に対する減免額の割合と同じ割合によつて減免されたものとする。

(市町村民税の減免)
第三百二十三条  市町村長は、天災その他特別の事情がある場合において市町村民税の減免を必要とすると認める者、貧困に因り生活のため公私の扶助を受ける者その他特別の事情がある者に限り、当該市町村の条例の定めるところにより、市町村民税を減免することができる。但し、特別徴収義務者については、この限りでない。


(参考)
市民税が課税されないかた(非課税)名古屋市公式HP