人類は歴史の中で*1様々な政治体制を築き、試してきた。
独裁制、元老制、寡頭制、そして民主制などだ。
現代社会、日本は民主制であるとなっている。
一部インテリ、エリート、テクノクラートと呼ばれる層が、政治的権力を握り社会を壟断する事は許されないと、私は考えていた。
「寄らしむべし、知らしむべからず」などという旧癖を脱却し、民衆は覚醒しなければならない。覚醒した民衆によって広く議論を興し、それによってこそ真の民主主義の社会が打ち立てられるのであり、そこにおいて民衆は初めて民衆自身の姿を自らに獲得する事ができる。「万機公論に決すべし」
そう考えていた。
しかし今や、この民主主義への理想と信頼は少々怪しくなっている。
いや、ハッキリと私自身の中に「民意」と呼ばれるものに対する不信感が根付いている。
河村市政を、「減税日本」を生み出した名古屋市民は、今こそその姿をしっかりと見つめるべきだ。如何にその姿が情けなく、醜悪であろうと目を離すべきではない。
3月5日の名古屋市会本会議。公明党の田辺市議が消防団の処遇改善について質問を投げかけていた。河村市長はのらりくらりと質問を躱していた。
総務省からは各地方自治体に対して消防団員に対して「報酬・手当」を支給するように求められているようだ。
報酬・出動手当 | 消防団に入るには | 消防団
名古屋市は「報酬・手当」を支給してこなか。
総務省としては「無報酬」の地方を公表して、地方自治体の対応、処遇改善を求めるつもりでいるようだ。
総務省消防庁は15日、団員に報酬を支払っていない消防団を公表、待遇改善を促す方針を決めた。国は消防団員に一定額の手当を支給する前提で地方交付税を地方自治体に配分しているが、実際の支給額は低く、無報酬の消防団も数十に上り、深刻な団員減少の背景とされている。
昨年4月1日時点の報酬額を調査し、夏までに無報酬の消防団を公表する。
総務省消防庁、報酬払わない消防団公表 待遇改善促す :日本経済新聞
(2014/2/15 20:24 日本経済新聞)
そして。
名古屋市は、現在は無報酬となっている消防団員に、報酬を支給する方針を決めた。5日の市議会2月定例会で、2014年度中に補正予算案などで対応する考えを明らかにした。
http://www.chunichi.co.jp/s/article/2014030590134807.html
(2014年3月5日 13時48分 中日新聞)
総務省からは平成23年から毎年勧告がなされていたそうだ。それでも対応しない地方自治体に対して、しびれを切らして「公表」という対応を取るとしたようだ。
そうしたところ急転直下報酬が支給されることになったらしい。
この記事にも書かれているように、河村市長は田辺市議の追求に「消防団と相談したい」などと答弁していた。「傍聴席にも消防団の偉い様が来ていなさる」とも。どうもその「偉い様」は私のすぐ後ろに座っていらっしゃったようで「どうせ決りゃせんわ」と嘆いていらっしゃる声が聞こえた。
河村市長の「決められない政治」または「何もしない市政」
しかし唯一、こうやって「体裁が悪い」話にだけは即座に反応するという事だ。
市長の外面(そとづら)を取り繕うために、市政というものはあるのだろうか。
次に民主党の小川議員が「敬老パスのICカード化」について質問を行った。
これについて少々変わった事態が発生する事になる。珍事の主は減税日本ナゴヤ、会派内幹事長であらせられる湯川栄光市議だ。
小川市議は敬老パスのICカード化の意義として、利用者が実際にどこからどこに乗ったか、またはどこに住んでいる人かという情報が得られると主張された。
現在、敬老パスについては、その対象が市営交通に限られている*2ので例えば地下鉄が通っていない守山区などでは利用機会が少なく、区の間に格差があるのではないかと言われてきた。
その為、守山区を通る瀬戸線などにも敬老パスを拡大させてはどうかという議論が続いている。
河村市長も敬老パスの利用拡大については市長選挙の際のマニフェストに「敬老パスの堅持 さらに利用拡大」と明記している。
しかし、現在の敬老パスでは各区の住民の利用率は判らない。
敬老パス自体に住民情報が無いために集計のしようがないからだ。(せいぜいサンプル調査かアンケートでもする以外にない)
その為に敬老パスをIC化すれば、守山区の住民と他の(地下鉄が通っているような)区域の住民との間の敬老パスの利用率の差がデータとして把握できる。
ここで小川議員は河村市長が常々言っていた「政治家の多選禁止」について確認の質問をした。「河村市長は多選禁止を訴えていた、前回の市議選においても『市議は2期8年で辞めて、どんどん市民が議員にならなければならない』というような事を訴えていた。減税日本の市議は2期8年らしい。ところで市長も2期でお辞めになるのか」(概要)このような質問をされていた。
これに対して、河村市長は「減税日本の市議の中には2期8年で辞めると約束した人もいるが全員ではない。政治家があまり多選を重ねるのは良い事ではない。自分については市長を2期やるか3期やるかは判らない」というような回答があった。
この回答を受けて小川議員は。
「もし河村市長が、市議同様、市長も2期8年が適当であると判断されるのであれば、その任期は平成29年の4月までとなるでしょう。それまでに『敬老パスの利用拡大』をしようとするのなら、遅くとも平成28年の9月ぐらいまでには何に利用拡大するのか決めなければならない。平成28年にこういったデータを揃えようとするのであれば、平成27年の内にはICカード化された敬老パスが配布されていなければならない。つまり平成26年度予算にICカード化の予算を付けなければ2期8年の任期の間に、市長選挙の公約である『敬老パスの利用拡大』ができない。今上程されている予算でICカード化を見送った(予算化されていない)ということは、『敬老パスの利用拡大』もやらないという事なのだろうか」(概要)と主張された。
全くご尤も。
地下鉄が通っておらず、名鉄瀬戸線などへの「敬老パスの利用拡大」を求めたい守山区選出の市議ならではの切実な質問であり、推論としても充分論理だっている。
結局、河村市長からはハッキリとした回答は得られなかったが、逆に言えばここでも反故にされるマニフェストの項目が一つ明確になったと言えるだろう。
小川議員が追及を終えると「議事進行」の声が上がった。
このトピックの主役である減税日本ナゴヤ会派内幹事長湯川栄光議員である。
いったい何が「議事進行」の対象になるのか、怪訝に思いながらも議長が発言を許すと。「小川議員の質問の中で、減税日本の議員が行った多選禁止の公約は質問の趣旨と関連していない、無関係の質問である」という指摘だった。
湯川市議の主張が通るか通らないかはここまで読み進められた皆様の判断にお任せする。
議場では「何が無関係だ、しっかりと関連しているじゃないか」とアチコチから野次が飛んでいた。
この一事をもってしても議会が湯川市議に対して「問責決議」をかけた理由の一端が知れそうな気がする。また、問責はどうあれ、この言語能力の無さ、理解力の程度では議会の理事が務まらない事は明白だ。
この湯川議員の「個人質問」は実はちょっとした「名物」になっている。
ある議員は「個人質問」をするからには「何かを変えなければ意味がない」と言われる。
湯川議員の質問で何かが変わった試しがない。
逆に、質問に対して当局からの回答で「たしなめられる」事が多々あるようだ。
実は今日も質問のトップバッターは湯川議員だった。
湯川議員は地下鉄のホームから転落する事故防止策を提案していた。
名古屋市の地下鉄でも桜通線などでホームに柵が設けられている。*3桜通線のホーム柵などはしっかりとしたもので価格も高価なのだろうが、その他にもロープで柵の代わりとするようなシステムもあるらしい。
そんな事例を提案していたが、当局からは「ロープを柵とすることは、手足や傘が引っかかるなどの危険性があるために混雑する名古屋の地下鉄ホームでは適当ではない」と「たしなめられ」ていた。
己の体面だけを取り繕う事に汲々とする市長、そしてその市長に生み出された市政を理解していない。いや、社会の成り立ちを理解していない「市議」
こんな存在を求めたのが名古屋の市民なのだ。
名古屋市民はこの事実を括目して見続ける義務があるのではないだろうか、
と、これだけでほとほと呆れていたところに追加情報が寄せられた。
議会後に理事会が行われてこの「議事進行」についても議題となったようだ。
「議事進行」を言われたので、どこにどのような問題があり、どの発言を精査する必要があるのか減税日本ナゴヤからの説明を求めたようだ。
そうしたところ小川議員の発言については問題が無いという結論に達したようだが、その会話の中で減税日本ナゴヤの鹿島議員が(概要)次のように述べたそうだ。
「議場で問題となった多選禁止、選挙前には一部議員が多選禁止、2期8年を約束して減税日本からの公認を貰った。一部の議員についてはこの約束がなされていない者も居る。こういった不公平があるという事で、減税日本ナゴヤの中では多選禁止の規定は無かった事になっている」
・・・・減税日本ナゴヤの市議は、選挙の際に「多選禁止、2期8年」を「公約」に掲げて選挙戦を戦っていたのではなかったのか?(則竹候補の選挙公報には「多選禁止条例の制定」という項目がある)
その市民との約束である「公約」を、会派内の「話し合い」で「無かった事にする」のは百歩譲って、千歩譲歩して、万歩踊って由としましょう。
しかしそれなら市民に説明と広報をしなければならないのでは?
市民との選挙の際の約束を違えても平気で居られるという、その考え方は全く理解できません。