市民のための名古屋市会を! Ver.3.0

一人の名古屋市民が「地域委員会制度」「減税日本」に対する疑問をまとめるサイトです。(since 2011/3/3)

10万票の謎と、それに対する提案

 今回の名古屋市長選挙において、河村市長は 427,542票を得て三選を果たし、第二期に突入した。私は告示前、選挙の態勢がはっきりした頃、よほどの事が無い限り河村市長の再選を阻止する事は出来ないだろうと思っていた。それでもシッカリと河村市政の現状を有権者の前に曝す事ができれば、未曾有といわれた第二回市長選の際の河村氏の得票66万票を半減。いや、30万票を割り込む事も考えられ、そうなれば、再選が叶っても、それは河村市政に対する否定であろうと思っていた。

 しかし、蓋を開けてみれば42万票の得票となったわけで。私の推測からはおよそ10万票の開きが発生している。

 この10万票のギャップは何故生まれたか。
 そして、それを埋める方法は無いのか。
 今日はそれを考えて見たいと思う。

 その前に少々寄り道をしてみます。一番目のデータをご覧いただきましょう。

 説明の必要も無いだろうと思います。今回の市長選挙における、3候補の各区別得票数と得票率(全有権者に対する得票率)及びシェア(有効投票数に対する得票率)を並べてみたものです。
 藤沢氏の地元である南区で特異な値を示している以外は、特に目を引く傾向は無いように思えます。
 今回、全体的な投票率が低かったので、投票率が高い区は浮動票の投票率も高くなっているだろうと推測できます。であるならば、投票率の高い区の河村氏の得票率が高いという傾向があるかとも思いましたが。(表現を変えると、地区別投票率と河村氏の得票率の間に相関があるか)どうも無いように思えます。
 
 この表でグレーに着色してある地域は、衆議院選挙で河村氏が出馬を噂された「愛知二区」を表します。

 結果として、河村氏は「愛知二区」から出馬しなかったわけですが、ちょっと寄り道してこのようなデータを作ってみました。

 この図は昨年の「愛知二区」の選挙結果です。河村氏から「増税大魔王」と言われた古川元久元大臣が、あの民主党逆風の中でも圧倒的な強さを発揮しています。

 さて、この表に今回の市長選挙における河村氏の得票を付き合わせてみましょう。

 無茶は承知しています。
 無茶ついでに言うのですが、衆議院議員選挙と市長選挙では投票率が異なります。

 今回の市長選挙における「愛知二区」の投票率は 40.08%です。
 昨年の衆議院議員選挙における同区の投票率は 57.99%になります。
 市長選挙に投票した有効投票者数は 150,454票で、
 昨年の衆議院議員選挙におけるそれは 210,109票です。
 衆議院議員選挙には、今回の市長選挙の1.4倍の人が投票した事になります。
 各立候補者の得票数にもその補正をかける必要があるでしょう。

 その補正をかけた表が次のものです。

 あくまでムチャクチャな推定ですが、古川氏を凌駕する得票数が算出されます。出れば勝てたんじゃないんでしょうかね?なぜ出馬しなかったのか。今でも私には判りません。

 さて、寄り道は程々にして、河村氏再選勝利、42万票の理由。について分析を進めましょう。

 今回、市長選挙と同時に南区と守山区で市議補欠選挙も行われました。

 この中で守山区の市議補欠選挙の得票数と、市長選挙守山区の得票数を表に整理してみましょう。それがこの図になります。

 松原候補、かまくら候補の得票を「推定第三極票」(A)とします。
 自民党の補選候補北野氏は 19,611票を獲得しているのですが、藤沢候補は 13、713票しか得られていません。その差は 5,898票あります。期日前の出口調査でも、昨年の衆議院議員選挙で自民党に投票した人々の4割程度が河村氏に流れているという分析が出たようですが、結果として 30.07%の 「取りこぼし」が発生しています。これを (B)とします。


 共産党においても、市議候補であるくれまつ氏の得票よりも市長候補である柴田氏の得票は低くなっています。ここでも「取りこぼし」が発生しています。これを (C)とします。

 また、今回の選挙において、市長選挙と市議補選の告示期間がずれ込んでおり、市長選挙の告示直後に期日前投票した人々が市議補選に気が付かなかったという事もあったようです。また、市長選挙には投票しても、市議補選には無効票を投じた人も居たのでしょうか。そのような差が 2,423票発生しています。これを (D)としてみます。

 以上のように、「第三極」に対する支持層と、自民、共産の取りこぼし。さらに、市長選挙には投票しても、市議補選には有効投票を行わなかった人々。これらの数字を足し合わせると、ちょうど河村氏の得票という事になります。

 反自民であり、反共産である。いわゆるリベラル、いままでであれば民主党に流れていたような票が基礎となり、自民党共産党を支援している層も、一定割合で河村氏に投票しているわけです。この自民や共産支持層からの票の流出が無ければ 42万票は 30万票を割り込んでいたかもしれません。つまり、この流出が、今回の選挙で私が読み違えた有権者の声だったようにも思えます。

 では、その声は何を言いたかったのか。

 なぜ、自民党共産党の市議を支持しながら、市長には河村氏を選択したのか。


 その答えを考える前に、もう一つの表をご覧ください。

 これは、先ほどの表に、更に前回の市議選挙の結果をつなぎ合わせたものです。

 前回の市議選挙。リコール後の出直し選挙ということで、今回よりも投票率が高く、総投票数も1万票ほど多くなっています。

 また、公明党は今回の選挙で自主投票となったようですので、金庭氏への支持票がどこへ流れたかは判りません。

 前回選挙で「減税日本」が獲得した票は 18,369票だったのですが、今回は 10,129票に留まっています。

 この減税日本の得票と民主党みんなの党の獲得した票を「反自民」として定義して和をとると、ちょうど 34,773票。今回の河村氏の得票と同じぐらいとなります。

 この際の自民党市議の得票合計が 12,955票で、これも今回の藤沢氏の得票に近い数字になっています。つまり、守山区自民党支持層のコア部分はこの辺りであったことが伺えます。共産党の候補が獲得した数字と、柴田氏の得票も同様の傾向が見られます。

 2011年の出直し選挙はリコール直後ということも有って、自民、共産などの既存政党には厳しい選挙となりました。その時に各既存政党の候補が得た得票と、今回の市長候補が得た得票が同様という事は、各既存政党の支持基盤、そのコア層しか市長候補に対する投票行動を起さなかったということが見てとれます。

 ここから、この数字に対する私の推測となりますが。なぜ、自民党の市議、共産党の市議が獲得した票が、それぞれの市長候補に流れなかったのか。

 「反自民」と定義できる票がハッキリとある。(しかし、今回の場合、その「反自民」票の一部を、自民党市議候補は切り崩している・・・・この種明かしは *1

 一気に結論を提示しますが。
 河村氏に投票した人は
   「既存政党、既存議会に対する忌避感が強くある」ということだろうと思います。

 選挙後毎日新聞の三木記者が次のような記事を書きました。
 http://mainichi.jp/opinion/news/20130502k0000m070140000c.html

 ここで三木記者が河村市長を支持した有権者の声を拾っています。

「減税や地域委員会など、古い政治を変えようとする意欲を感じる」と期待する。(略)「自分の給与を約2600万円から3分の1以下に下げ、議員報酬も半分にするなんて自民、民主などの政党にはできない」と絶賛した。

http://mainichi.jp/opinion/news/20130502k0000m070140000c.html

 
 これらの発言は完全に誤解です。
 減税も地域委員会も「古い政治を変えようと」実施されたわけでもありませんし、失敗しています。また意欲も感じられないどころか、地域委員会については意欲すらなくしているのが実情です。
 また、議員報酬についても、結局引き下げたのは議会自身(つまり、自民、民主などの政党自身)であったのであり、更にいえばそれが意味があったと思えない。
 そもそも市長報酬や市議報酬を、三分の一や半額と言うような乱暴な下げ方をして、制度が成り立つか。事実に則した議論が必要な筈であるが、そんなことは一切無視して「絶賛」の的となる。

 つまり、市民は既存の行政、議会、政党に対して「既得権に塗れた密室の中で、自分たちだけ甘い汁を吸っているのに違いない」と推測し、その密室をぶち壊してくれるものとして、河村市長に投票しているのでしょう。

 当ブログを詳細に見ていただければ判ると思いますが、その密室の中にいるのが河村市長ご本人なんですけどね。

 つまり、議会や議員の等身大の姿を見せ。これらの誤解を徹底的に解いていかなければならないのです。

 その為には、市議の皆さんがより一層の情報開示、有権者との交流を図らなければならないでしょう。そういう意味で、その為の方策を3つ提案します。

 1.新型議会報告会の開催
 2.「議会の日」の実施
 3.インターネット放送の活用

 余り紙面に余裕が無いので簡単に触れていきます。
 1.新型議会報告会の開催

 今までの議会報告会では議会からの形式的な報告と、一部の熱心な市民が発言するだけで*2、発言できずに不満を持つ市民や、折角参加しても一度も発言できずに帰る議員の両者とも消化不良のままでした。
 なので、議会報告会の会場を7つに割ります。
 6つの常任委員会と、総合と言うジャンルの7つの円座を会場である講堂に設け、議員はこの7つの内のどれかに座ります。
 6つの常任委員会の席には、各委員会の委員長と副委員長は必ず座ります。
 総合ジャンルの席には議長と副議長が座ります。

 参加した市民は、受付で興味のある事柄を告げ、それがどの委員会に当たる議題か振り分けてもらい、席に着きます。こうしたそれぞれの円座で市民と議員が徹底的な議論を行う形式を取ります。

 具体的な問題について、即答できない事柄については希望される市民には後日回答することも含めて、徹底的な議論を行います。

 こういったセッションが約1時間。その前に、全体的な議会報告を30分と、セッション終了後に各委員会、総合の司会担当(委員長、議長)からの感想を30分。

 2.「議会の日」の実施

 これは上記のような議会報告会を更に拡大したものです。
 場所は名古屋市公館と東庁舎の各委員会室、会議室とします。

 「議会の日」として一日の間、公館と東庁舎を開放し、徹底的に市民と議員が話し合います。

 朝、昼、夕方の3回ほど、公館で「全体セッション」を行い。その外の時間は東庁舎の各委員会室、会議室で市民と議員が議題を決めて議論を行います。
 
 3.インターネット放送の活用

 現在、議会からも議長会見などの形で随時中継は行われていますが、これを一気に拡大していただきたい。

 このようなインターネットの中継は議会だけでなく、例えば自民党市議団、民主党市議団。共産党市議団のレベルでも可能だろうと思います。なんなら個人でも可能です。

 また、名東区千種区などでも党派を超えた市民集会、勉強会なども行われており、これらをインターネット中継する事で広く、そして若者にまで名古屋市会を理解し、興味を持ってもらえる可能性もあります。

 特に、自民党に関していうと、今回幹事長になった坂野市議。横井ブログによると「彼の辞書には内緒話が無い」ということで、非常に「キャラが立った」方だと思います。
 この坂野市議と大学生の対話など、私は個人的に見てみたいですね。

 民主党共産党公明党の市議の中にも論の立つ方はみえますし、市民の中にも手ごわい論客といえる人はいます。
 これらの方々によって、様々な話題を議論し、議論の様子を見ていただくことで名古屋市の市会議員の実態もご理解いただけるものと考えます。

 以上が、河村氏に投じられた10万票の謎と、それに対する私の提唱する対策です。

 ポピュリズムポピュリズムと批判するだけでは何も解決しないでしょう。そして、ポピュリストが煽るような嘘やオーバートークを元に、政治が曲げられるのは市民にとって不幸です。

 私の少ない経験からいっても、今の名古屋市会には党派を超えて良質な地方議員、政治家が居ます。それらの人々の実態を市民に知ってもらうだけで、ポピュリストの嘘は暴かれ、現実に立脚した政治が名古屋市会に戻ってくると信じています。


*1:自民候補が得票を伸ばした理由の第一は、昨年の衆議院選挙から引き続き高い支持率を維持している安倍自民党政権への順風があるだろう。そしてもう一つ ここにも示されたデータに秘密がある。自民党の候補は一人だけ30歳代なのである。こういった場合、もっとも若い候補に得票が集まるという傾向もある。今回、自民党の候補はこの年齢を強く前面に押し出した選挙戦を展開した。

*2:すいませんね