市民のための名古屋市会を! Ver.3.0

一人の名古屋市民が「地域委員会制度」「減税日本」に対する疑問をまとめるサイトです。(since 2011/3/3)

減税の底流に流れるもの

 河村流市民税減税は、本日から開催される名古屋市臨時議会で可決されそうな見込みだ。昨日までの論考の通り、歳出削減を行って、それを減税として納税者に返金する(課税額を下げる)行為は経済効果としてマイナスに影響する。(景気過熱局面においては「冷やし玉」という意味を持つかもしれない)であるから、河村や減税日本などが言うような「経済対策としての減税」などという言説は、単に不勉強なものの間違いか、判って言っているなら「嘘」である。

 そうでないというのであれば、是非「(歳出削減を伴う)減税が経済対策になる根拠」をコメントにでも投稿願いたい。誰々の言っている、このような主張、論拠がある。程度の言葉でも結構だ。それならば一行程度で片が付くだろう。

 それでも「プライス・キャップ」を掛けて行政改革の契機となりうる。と主張する者がいるかもしれない。それもやはり「まやかし」だ。毎年積み上がる義務的経費は、それでなくても行政に歳出の再編成を迫る。その際に必要なのはテクニカルなシーリングの手法(※1)ではなくて、価値観の対立を乗り越える政治の議論である筈だ。
 それらの例は、例えば今年開催された市民参加による外部評価を見ても明らかだろう。どのような行政事業が不要であり、何が必要であるか。「万人に正しい政治などというものはない」のであるから、政治的リーダーシップを持って、批判を承知で必要/不必要を打ち出せなければ政治家など要らない。

 まあ、とりあえず。今回可決されそうな減税案は、たかだか0.3%。6%の市民税が5.7%に下げられるだけだから、こういったマイナスの影響も微かなものだろう。

 ところで、この画像は沖縄県の金武町(きんちょう)のHPである。この町は平成24年から個人町民税を10%削減するらしい。人口約1万1千人のこの町は、面積の6割を米軍基地が占めているそうだ。町の総予算約93億円の中で、町民税の占める割合はわずか12%程度でしかない。(広報金武 平成23年12月号)米軍基地という、究極とも言える「迷惑施設」を受け入れている地域であれば、このような負担軽減も理解できる。
 逆に、日本の中心、東海道のど真ん中で、豊かな水と土地に恵まれた名古屋が、いったい他の地方から援助を貰ってまで減税までをする大義名分が何処にあるのだろうか?

 これは「地域委員会」における問題点とも関連する、河村及び彼の支援者たちの底流に流れる問題点であるのだが、彼等の「粗野な新自由主義」的主張は、自由競争の原理だけが社会を前進させる力であると誤解している。
 社会を前進させるのは自由競争の原理だけではないし、自由競争には他を押しのけるという排除や、攻撃的な傾向が含まれていることを自覚すべきだ。(※2)
 重荷となる地域を切り捨てるという思想が見え隠れしている。その思想の裏返しとして、河村は「減税によって他都市から人や企業を呼び込む」と明言している。そして、イチロー選手や漫画家の鳥山明氏などを名古屋に招くというような事も語っている。
 こんなことをされたら、名古屋は良いかもしれないが、イチロー選手を誇りとしている豊山町の住民や、鳥山明氏を大切に思っている清須市(※3)にしてみればたまったものではあるまい。

 そもそも市民税が(10%減税で)6%から5.4%に下がったぐらいでイチロー選手や鳥山明氏が、愛着があるであろう「地元」を離れて、名古屋に引っ越してくるであろうか。
 河村やその支援者というのは、そもそも「地元に対する愛着」というものを、たったの0.6%よりも軽く考えているのだろうか?

 地域への愛着を本当に理解していないのは河村ではないのか?

 昨日、一昨日と論考したような、経済理論から導き出した減税効果について。既に22年度の減税実施の際に語り尽された議論なのかもしれない。私は本年の3月ぐらいから、地域委員会の問題で河村市政にコミットし始めたので22年頃の減税議論の流れ自体は良く判らない(ただ、その頃の文章であるとか議事録などは見させていただいている)
 なので、「減税が経済政策(景気刺激策)として意味がない、マイナスに働く」などという事は、名古屋においては既に常識になっていてもおかしくはないだろう。しかし何故か、名古屋市民から情報が隠蔽されている様にも見える。ここでは、「税とは何か」再考でも触れたようなマスコミの「歪み」も影響しているように思えてならない。

 河村流減税論は記事として「面白い」のだろう。
 それに対する学者や議員の議論は「退屈で面白くない」だろう。(昨日、一昨日のような数式が新聞紙面に載っていれば、そんな新聞を買うだろうか?/そんな新聞が売れる程、市民の教養レベルが高いというのも興味深いが)

 昨日、一昨日の記述が面白いと思えるには、それまでに相応の準備が要ると思っている。誰しもが「面白い」と思えるような文章でないことは充分理解できる。

 しかし、こういった事を理解し、こういった事実に即した議論ができるようにするのも、メディアの役目なのではないだろうか。

 当たり前の話は、当たり前だから面白くない。
 常識外れの話は面白い。

 河村のように、あたかも空中から札束を取り出してみせるような話は、確かにその時には面白い。面白いかもしれないが、それは「嘘」なのであるから、娯楽として楽しむ分には問題が無い。テレビ画面の中で、ビートたけしや三宅何某に馬鹿にされて、ワチャワチャと愚にも付かない政治談議を繰り返すだけであれば幾らでも続ければ良い。

 しかし、そういった無責任な政治談議と、基礎自治体地方自治における生活に密着した実体的な政治とは、まったく異質な物であって、その差すら判っていないとすれば、病膏肓に入るとしか言いようがない。



※1:何度でも引いてやるけれども。平成21年12月1日、市会定例会における河村市長答弁「名古屋市の予算は2兆6000億円ですけど、重複分を切りますと1兆6000億円です。今度やるのが約160億円だとしますと、たまたま初年度ですから、だから、ちょうど1%ですよ、総予算の。総予算の1%の行政改革ができぬのですか。そんなことだったら最低の経営者ですよ、それは。できるんです、これは。」

※2:議会リコールという排除、攻撃など見事にその例だろう。そういえば、ナゴヤ庶民連の会合における、私という異物に対する「帰れコール」も排除、攻撃のメンタリティですな。

※3:鳥山明氏というのは、週刊少年ジャンプで「Dr.スランプ あられちゃん」「ドラゴンボール」シリーズなどを連載している漫画作家である。ドラゴンボールシリーズはハリウッドで映画化されるほどの作品であり、キャラクターデザイナーとしては「ドラゴンクエストシリーズ」などのデザインも手がけている。
 つまり、とてつもなく「稼いでいる」世界的な作家である。
 彼は名古屋市出身であるが、今は清須市に住んでいる。仕事の都合から「東京に引っ越そうかな」と語ったところ、それを聞きつけた当時の清須市長が鳥山氏に面会を求め、引越しを思いとどまるよう説得し、氏の都合が良いように自宅作業場から小牧空港までの道路を整備した。というのは都市伝説として広く語られている。