3月6日金曜日の名古屋市会、総務環境委員会は、4日水曜日に呼んだ北角秘書から回答を聞く場となった。いや、なる筈だった。
今の市議会には余裕がない。
3月12日には市会議員の任期は切れてしまう。
その為、現在上程されている議案、名古屋市の予算案について、議会が修正や否決をして、市長が再議を求めても求める先が無くなってしまう。その為、予算案について義務的な支出については専権で処理できるにしても、政策的な支出については次の議会に議案として再提出されるまで議会承認を得ることができない。
(つまり、中日新聞がいくらSL予算は認められないと煽っても、敢えていうが、そんな問題で市長が再議をかけて、予算執行に差支えそうなら議会としては強硬な姿勢を取れない。つまり議会は「人質」を取られているのだ) *1
市会議員の任期が切れるという事は、当然の事ながら選挙が間近に迫っているという事で、色々な動きがある。*2
ここで釘を刺しておきたい。
今、日本を席巻している経済理論はトマ・ピケティの主張だろう。「再配分」という言葉を聞かない日はない。各党が「再配分」にすり寄っている姿はあさましくもある。
河村流減税政策というのは、この「再配分」機能を持つ「税」自体を否定するものであって、「反・再配分」とでもいう経済政策である事は是非とも指摘しておきたい。今更逃げ腰はなしだ。「減税政策こそ再配分政策です」なんて訳の判らない強弁もみっともない・・・というか、それぐらいやっていただくと、さすがに名古屋市民も気が付くでしょうから、やっていただくと有難い。
減税政策や行政の仕事を市場原理主義にさらして公共の撤退、縮小を企図する事は「再配分」の論理とは対極にある。(更に、河村流減税が「金持ち優遇」である事は明白だ)
また、ピケティは国や地方の公的債務についても明確に処方箋を提示している。既に当ブログでは詳細に検討したが、彼の言葉を再掲させていただく。
今日のヨーロッパほど巨大な公的債務を大幅に減らすにはどうすればいいだろう?手法は三つあり、それを各種の比率で組み合わせることもできる。資本税、インフレ、緊縮財政だ。民間資本に対する例外的な課税が、最も公正で効率的な解決策だ。それがだめなら、インフレが有効な役割を果たせる。歴史的には、ほとんどの巨大公的債務はインフレで解決されてきた。公正の面でも効率性の面でも最悪の解決策は、緊縮財政を長引かせることだ。(21世紀の資本 p.568)
参照:2015-02-14 ピケティ「21世紀の資本」からみる河村流減税論
緊縮財政は公的債務を減少させる効果がある。しかしそれは最悪の解決策だ。(特に、デフレ経済下においてはナンセンスでしかない)
その緊縮財政の為に、公務員給与を引き下げようというのは、誤った縮小均衡論であると言わなければならない。
頭からトマ・ピケティの示す経済理論や、彼の処方箋を否定するのであれば結構だが、ピケティ人気にあやかりつつ、緊縮財政論を主張するインチキは無しだ。
ピケティ『21世紀の資本』スライド - 山形浩生の「経済のトリセツ」
『フィナンシャルタイムズ』批判に対する回答2014 年 5 月 28 日
『21 世紀の資本』専門補遺 2014 年 7 月 18 日
(反論するのであれば、本文だけではなくこれぐらい目を通してからにしないと恥をかきます)
そもそも河村名古屋市長は「財政出動が必要」と言いながら、公債比率が順調に下がっているように、経済について判っていない事は明白だ。ピケティが12月31日の朝日新聞で「インフレ率を上昇させる唯一のやり方は、給料とくに公務員の給料を5%上げることでしょう」とデフレ脱却には公務員給与を「引き上げるべきだ」と言っているにも関わらず、わざわざ名古屋市の人事委員会の勧告(名古屋市職員の給与を引き上げる勧告)を無視する暴挙に出た背景には、この経済音痴が預かって余りあるのだろう。
確かに、小泉・竹中改革以来、国民は「小さい政府論」「財政均衡論」が「正しい経済政策」であるかのように思い込んでいる。その結果がこの長きにわたるデフレ不況なのだが、更にここで「最悪の解決策」である「緊縮財政」を続けようというのは、これは経済論的判断ではない、こうした誤った経済政策でも、公務員の給与を引き下げることに喝采を送る一部の国民に阿った政治的判断であると言わざるを得ない。*3
インフレが亢進している場合にはこういった縮小均衡政策もアリだろう。しかし、現在のように明白にデフレ後退期にこのような縮小均衡策を行えば経済は冷え込むばかりだ。
と、こういった意味合いからも、今回明らかとなった「名古屋市長 河村たかし」の人事院に対する「要望書」は経済論的に誤った文書である。(政治的になら話は分かる:後述)
さて、3月4日に北角秘書は委員会に二つの約束をした。
1.要望書の撤回を市長に進言する
2.名古屋市人事委員会の勧告を受け入れるように市長に進言する
結果はどうであったか。おおかたの予想のごとく、すべて拒否との回答だった。
北角秘書は職責として、市長や各関係者との調整役の筈であって、そこには議会も含まれる。そして議会と市長の主張が衝突するときに、その間に入って調整するのが職責なのだろうが、それが全然できていないということだ。
ここで問題なのは、この間、市長に進言をしてみて拒否された。とするならば、例えば議会との妥協点はどこであるかとかの「調整」すら行っていないようなのだ。
・・・いつもの事で申し訳ありませんが、前置きが長くなりすぎたので、ズバリと書きますが。結局、3月4日に北角秘書が委員会に出席したというのは、「議会からの<攻撃>に対して耐え凌げればいい」とぐらいに思っていたのではないだろうか。
「議会は北角秘書を攻撃するために攻撃する」と思っていた節がある。
どうせそんな<攻撃>は時間的な制限がある。ただ頭を下げて適当に言い逃れをしてお茶を濁しておけば有耶無耶になるとでも思っていたのではないか。
こんな考えでいたのなら、まったくの思い違いだ。そんな一時しのぎで逃げられるものではない。
北角秘書は何とぶつかっているのか判っていない。これは河村市長も同じだ。
北角秘書は「法律」や「制度」つまり、この社会そのものとぶつかっているのだ。
河村市長もそうだ。河村市長は常々「いくら言っても市の職員が動かない、やってくれない」と語るが、市の職員は怠業をしている訳ではない。市の職員は法に反する事はできないのであって、法に反するから市長の指示に従えない。つまり、河村市長の指示自体が法や事実に反するのだ。*4
こうした傾向を私は2011年の7月に指摘している。
彼らは「板ばさみ」になっています。何と何が彼等を板ばさみにしているか。それは「嘘」と「真実」です。
今、決然と反河村宣言! - 市長のための市会ではなく、市民のための名古屋市会を! Ver.2.0
河村市長を囲む「仲間うち」では、たぶんこうした人事院への要望書を「名古屋市長 河村たかし」として出すことが「良い事」と思われていて、それが法的にも問題ないと思われているのだろう。*5そうした法的に問題ない事を議会はさも問題があるように「わざわざ」北角秘書を委員会に呼んで問題として荒立てているだけで、それは河村市長や減税日本に対して「攻撃」をする意図があるからに違いない。
「北角さんには苦労を掛けるが、ここは議会の「攻撃」に耐え、身をもって河村市長を助けてくれ、それが秘書の仕事だ」ぐらい誰か言っていそうです。
と、思ったら。本当に言っている。
https://twitter.com/yutakakinjo/status/572981997133422592:twitter:detail:left
https://twitter.com/yutakakinjo/status/572982763495682048:twitter:detail:left
https://twitter.com/yutakakinjo/status/573742331469303810:twitter:detail:left
追記(3月10日):総務環境委員会、各委員からの指摘を受けて上記コメントは削除されたようです。 https://twitter.com/yutakakinjo/status/574793890886111232:twitter:detail:left
ちなみに、
yutaka-kinjo (@yutakakinjo) | Twitter
結局、この金城市議も「北角さんいじめ」程度の認識なんですね。
そんなバカな事はしませんよ。子どもじゃないんだから。*6
何が問題であるのかご理解されていない。私はこの金城議員をマジメで正直な方だという印象を持っているけれど、こうしたヒト*7を騙すのは罪な行為ですよ河村さん。
この6日の委員会。北角秘書が追求されている間、出席した減税日本ナゴヤの市議は一言もしゃべらなかった。委員会終了後、追求をしていた自民党の藤田議員が「しかし、北角さん、あなたもかわいそうだね。ここにいる減税の委員は助け船も出してくれないのか」と声をかけたらしい。そうしたところ傍聴をしていた減税日本ナゴヤの山田さん*8が「減税日本は公平中立ですから」と受けたらしい、と、ここで驚く展開が有ったそうだ。この委員会の委員でもある公明党の金庭議員。非常に温和で冷静な方だ。私も何度か直接会話をしているが、およそ怒った顔など想像もつかない人物だ。その金庭議員が「減税日本のどこが公平中立だ!」と怒ったそうなのだ。
もう、本当にバカな事は止めて欲しい。そもそもこの人事院に対する「要望書」なんて、完全にマスコミ向け、市民向けのパフォーマンス。つまり選挙対策じゃないか。政治活動、選挙活動でしかない。(そんなものが公式の名古屋市長会見に残っている! 名古屋市:平成27年2月2日 市長定例記者会見(市長の部屋) )*9
こんな「政策」に拍手を送る者は、経済も判らない、他人の幸せを妬む類の「引下げデモクラシー」に組する者たちである。
稚拙にも、基本的な事実関係の誤認がある。そして名古屋市として稟議も決済も経ていない。こんな文章を「名古屋市長」として「人事院」に提出する。*10
そして、経済的にも間違っている。
更に、そのようなものを「何故」作ったのか。
単なる選挙対策でしかなく、それにしては幾重にも稚拙である。
さてさて、そんな文章を作成するに、名古屋市の公費で賄われる特別秘書の手を煩わせることが真っ当な事でしょうか、誤ったことでしょうか、如何思われます?金城市議。
そして、それを名古屋市の市費の使われ方を審議する名古屋市会の委員会が調査する事が「公平中立」な行為ではないのですか?山田さん。いや、あなた語るに落ちていますよ。
山田さんは北角さんを追求する委員会の在り方が「公平中立でない」とおっしゃるのか?という事は、北角さんの存在や、これらの文書の存在自体が党派性を持っているという事なのか?なら、やっぱり選挙対策のポピュリズムではないか*11。そんなものの為に、河村市長は名古屋市の人事委員会の勧告を無視して職員給与を据え置いたというのか?
そもそも山田さんがいつまでたっても(もうすでに4年だ!)子どもじみた「敵と味方」という二分法でしか物事をとらえられないから、「公平中立」などという言葉が出てきたのではないのか。
北角秘書が、河村市長が、そして減税日本がぶつかっているのは、事実という壁であり、法律という壁であり、制度という壁である。つまり、あなた方は社会そのものとぶつかっているのだ。いい加減に「事実」に目を向けなさい。
前回「河村たかしの私的活動に、公設秘書を流用した公私混同ではないのか?」に対する回答例があると申しました。私の回答例を提示しても「後戻りできないぬかるみに足を入れてしまっている」ので公開します。
簡単です。「北角さんの就業時間外の個人的な活動です」と回答すればよかった。
それでも一般職の公務員であれば政治活動自体禁止ですが、特別職であれば就業時間外にどのような活動をしようと自由ではないですか。
「北角さんは個人の自由な活動として、河村たかしの政治的活動を手伝いました。文章をワープロで打ちました」で良いんじゃないんですか?
でも、もうこの「言い逃れ」も通用しませんね。
だって、文書自体を「公文書」と位置付けちゃったんですからね。
「公文書」であれば「公設の特別秘書」がワープロ打ちしても問題ない、公私混同ではないと思ったのだとしたら、そんな事を思いついた者はバカとしか言いようが有りません。
#872052
*1:ちょっと話が脱線するが。 3.11東日本大震災の際、被災地でも各地方議会で改選が迫っていた。ところが災害のため選挙ができない事態となり、特別立法によって議員の任期を延長し秋に選挙を行う事となった。この場合、特別立法の成立まで、各地方の議員は任期が残っており、「任期延長」が認められたわけだ。さて、3月12日で「任期切れ」を迎える名古屋市会。ここであの規模の災害が発生したなら。東北の場合のような「任期延長」はできないのだから、議会は構成できない。災害対策が落ち着くまで半年程度、議会が不在となるのであれば、様々な問題が起こることは容易に想像がつく。つくづく無茶なリコール運動だったと改めて思う。
*2:おお、ここでとても面白い個別事例を入れるつもりだったがあまりにも長くなるので後日にまわす
*3:そして、そもそもなぜこの一部の国民は公務員給与の引き下げを喜ぶのか。まったく意味が分からない。彼が民間企業で働いているとしたら、民間企業の給与水準は公務員給与も参考にされる。公務員給与の引き上げが止まれば、彼自身の給与も引き上げられない。彼が商店主だとしよう。顧客の中には公務員の家庭も含まれている筈だ、公務員給与が上がらないという事は、こういった家庭の可処分所得も上がらないという事で、彼の商店の売り上げも上がらない。公務員の所得と民間の所得はトレードオフ(奪い合い)の関係にはない。経済は循環であり、どこかを小さくすればすべてが小さくなる。つまり、公務員の給与が下がれば、その可処分所得が下がり、消費が下がり、商品を提供する商店の売り上げが下がり、商店に勤める民間企業の従業員の給与も下がる。
*4:鳥久の問題でもそうであろうし、減税のシミュレータが「怪しい値」を示すのもそうだ。財政局は市長とともに板ばさみになる覚悟なのだろうか
*5:なんと驚く事に、北角秘書はこの文書が「公文書」それも「特別な公文書」であると回答した
*6:自分たちの子どもじみた尺度で、社会を測るのは止めた方が良いですよ
*7:則竹もそうだね
*8:私は市議とは認めていないので「さん」付け
*9:市長会見は公務と政務に分かれていて、公務はこのように議事録が残り、市の中継も行われる。「第二部」とも呼ばれる政務部分については議事録は残らないし、市の中継も行われない、さらに市の職員も立ち会わない。ここに「要望書」についての記載があるのはこうしたケジメにほころびが出ていると言える
*10:例えば、「衆議院議員」であれば、それは成立するだろうけれども、「●●政務官」やら「●●大臣」などの政府員であれば成立しない。たとえば総理大臣が「個人的な見解」を総理大臣の肩書をつけたまま文章にして出すだろうか。そんなものを外国に差し出したら大変な問題になる。そういえば南京発言問題も、市長と一政治家とのケジメの問題ととらえれば同根の問題だ。そしてこの問題も放置されたままだ。