市民のための名古屋市会を! Ver.3.0

一人の名古屋市民が「地域委員会制度」「減税日本」に対する疑問をまとめるサイトです。(since 2011/3/3)

22年(令和4年)度末までに名古屋城天守木造化「基本計画書」策定?

 つい先日、コンビニで買い物をしようとしていたら、私の前で支払いをしていた若者が、財布を出す拍子にポケットから何やらカードらしきものを落とした。そのまま気づかずに精算を済ませようとしていたので、背中をつついて「何か落としたんじゃない?」と声をかけた。すると若者は「あ、ありがとうございました」と風体とはそぐわないような丁寧な挨拶を返してきた。

 別に、黙って見過ごしても良いことだろう。また、見知らぬ人に声をかけるということは、或いはこのご時世、そこそこ難しいことなのかもしれない。しかし、私が生まれ育った下町では、声をかける事に抵抗はないし、見知らぬ赤の他人であっても、誰かがみすみす損をする事を黙って見過ごすことはできない。

 こうした適切な範囲の相互干渉がコミュニティの起点だろうとも思える。

 そして、このブログもそうした私の「黙って見過ごせない」という、「おせっかい」の延長でしか無い。

 別に私は、河村たかし(市民に嘘をつく公職者に敬称はつけない)に恨みがあるわけでも、減税日本と言う政党に対して、含むところがあるわけでもない。ブログの最初の頃を見ていただければ分かる通り、河村たかしの提唱する「地域委員会」について、頭から反対しようとか、賛成しようとか思って情報収集をしたのではない。しかし、「地域委員会」について調査を進めてみると、この制度そのものよりも、それを提唱しながら、自分の提唱している制度を理解していない河村たかしと言う人物に「違和感」を覚えた。やがて、河村たかしの発言の虚偽性、そしてその虚偽の理由が、単なる保身であることが分かってきた。

 この「地域委員会」について、ちょっと脱線すると。平成28年には「名古屋市は地域委員会の導入とかいってコミュニティ政策が5年も6年もそのせいでおくれてしまったと私は思っています。」( 平成28年 都市消防委員会 05月09日 沢田晃一委員)との指摘もされている。

 名古屋市会会議録・委員会記録検索システムで「地域委員会」を引くと3685件の発言がヒットする。しかし、平成28年以降、減税日本ゴヤの市議でこの言葉を口にするものは居ない。

 平成28年に、総務環境委員会において、手塚委員(当時、減税日本所属)が委員間討論で「地域委員会」について議論しているが、やはり活発に議論されていた頃は、手塚市議はまだ市議に成っていなかったので、制度についてよく理解していないと回答している。これはつまり減税日本の市議2期生に対して「地域委員会」について党内での申し送りが行われていない事を示している。減税日本内部で「地域委員会」について、党内議論、研究がなされていないということを表している。

 平成26年には、減税を割って出た「新政会」堀田太規市議による「名古屋市地域支援員制度」の提案がなされている(平成26年2月定例会 03月06日)が、減税日本ゴヤから同様の代案や、「地域委員会」について再起動の要請などは行われていない。つまり、1期生たちは、自らの公約である「地域委員会」について、現在、何もやっていないということとなる。

 減税日本ゴヤ1期生は皆、立候補の際、選挙公報に「地域委員会全市拡大」との公約を掲げていた筈だ。それが次の選挙では消えている。しかし、「地域委員会」で解決しようとした問題は何も解決されていない。なぜ、2015年の公約で「地域委員会」が消えてしまったのか?

 河村たかし減税日本の面々にとって、公約など「自分が必要と思う政治課題」でもなければ「有権者に対して実現を約束する問題」でもない、単にその場その場で、いちばん有権者の注意をひきつけ、票につながる「言葉」でしかない。

 河村たかしが日頃考えていることは、自分の再選、つまり自分の保身・既得権への固執でしかなく。政策の是非など頭にない。ましてや有権者の困窮や問題意識も、それがメディアに取り上げられ、有権者の注意を引けば声には出すが、選挙や票に結びつかないとなれば、声にすら出さない。そして、声を挙げても、事はそこまでで、そうした有権者の問題を解決しようなどと動くこともなければ、問題解決への方策を練る知恵などもない。却って河村たかしが口を挟むと、問題がこじれる傾向にある。

 (ちょっと脇道に逸れるが、この「地域委員会」は名古屋市内における区政協力委員や学区連絡協議会という、それ自体は優れた地域自治の制度における、高齢化や組織の硬直化に対する一つの提案だった。中日新聞も実に一所懸命「地域委員会」について伝えていた。ところが、それが頓挫すると紙面には書かれなくなり、やがて市民も興味を失った。その結果2015年の減税日本の市議たちの公約からは「自然消滅」してしまったが、問題は何も解決していない。上記のように公約を掲げながら、その存在を忘れた減税日本の市議、及び河村たかしは批判されて然るべきだが、中日新聞も同等の罪を自覚すべきだ。「地域委員会」の議論で名古屋市のコミュニティ政策は5年も6年も遅れてしまった(この発言が5年前だから今では10年、11年遅れていることになる)のであり、その責任の一端は間違いなく中日新聞にある)

 河村たかしが口を挟んでこじれにこじれた問題、そして「地域委員会」同様、やがて沙汰止みになって、話が有耶無耶になるだろう今日の課題が名古屋城天守の木造復元事業だろう。(本当に、河村たかしがこの後10年程度「終身市長」とか市長の座に居座って、市職員がごまかし続けて、中日新聞が盲目的におだてあげれば、あの約100億円の木材も「無かったこと」にされそうだ)

 一昨日、11月9日の名古屋市会、経済水道委員会で名古屋城天守木造化について議題に上った。

 中日新聞は11月10日朝刊の市民版でその様子を伝えてはいるが、相変わらず「名古屋城天守 解体と復元 22年度末までに基本計画書策定」とタイトルを打って、あたかもこの事業が進んでいるかのように見せている。しかし、そもそも名古屋城木造化は「東京オリンピックにおける観光の目玉」として企画されたはずで、オリンピックはとっくの昔に終わっており、事業そのものの見直しを行うべきだろう筈が、今になってまだ「基本計画書策定」と来ては正気を疑う。

 現在私は、この名古屋城木造化事業に対して、名古屋市と裁判を戦っている。

peraichi.com

  次回 第五回 控訴審は 12月9日(木) 午後4時30分
     名古屋高等裁判所 10階 法廷です。

<最短で知る名古屋城木造化住民訴訟


名古屋城木造化事業は、名古屋市から竹中工務店に発注されている。
・事業は次の3業務で進められる。
  ①基本設計業務、
  ②実施設計業務、
  ③施工である。


名古屋市は平成30年3月30日に「基本設計」が完成したとした。
竹中工務店に約8億4千万円の基本設計代金を支払ったが、「基本設計」は完成していない。


・完成していない業務に代金を支払ったことは違法である。
(地方自治法第232条の4第2項、名古屋市会計規則 第71条、名古屋市契約規則第53条違反)


・誤って支払った基本設計代金(約8億4千万円)の支払いを賠償せよ。
・基本設計が完成したと誤認して進められる木造化事業を停止せよ。


○「基本設計」は完成していないとする根拠


 名古屋市竹中工務店と本件事業を進めるにあたって、基本協定(甲3)を結んでいるが、その前提となる文書は名古屋市が事業の条件を示した「要求水準書」(甲1)であり、その中で「木造復元に際し、実施設計に着手する前の基本設計の段階において、文化庁における『復元検討委員会』の審査を受け、文化審議会にかけられる」と記載されている。公知の事実として本件事業は文化庁の復元検討委員会の審査を受けておらず、文化審議会にもかけられていない。すなわち、基本設計の段階に至っていない。


 この文化庁における「復元検討委員会」の審査に必要な書類が、一昨日「策定する」とされた「基本計画書」である。つまり、「基本計画書」もなく、「復元検討委員会」の審査も受けていない現状(令和3年11月11日現在)は、基本設計完成とは言えない。ましてや平成30年3月30日に「基本設計」が完成している道理がない。


○平成30年3月30日に「基本計画書」は完成していない


「基本設計」の業務仕様を定めた「基本設計業務委託仕様書」(甲6)において、


https://app.box.com/s/ff3ykt80mtkbmfcvoo27khekujr296id/file/775762260010


第23条(建築基本設計)では、「建築基本設計は、以下の項目について行う」と記載されている。
  (1)基本計画書、
  (2)透視図
である。


 ところが、平成30年3月28日(上記基本設計納品日の2日前)に開催された「特別史跡名古屋城跡全体整備検討会議天守閣部会(第9回)」の議事録(甲20,21)には


https://app.box.com/s/ff3ykt80mtkbmfcvoo27khekujr296id/file/775771533784
https://app.box.com/s/ff3ykt80mtkbmfcvoo27khekujr296id/file/775770827380


 事務局(名古屋市職員)の発言として「復元検討委員会の開催を(平成30年)7月に想定しています。それにあわせて、4月、5月あたりで検討をまとめ、6月に未策定のものを天守閣部会に諮らせていただき、7月に全体的な基本計画のまとめを挙げさせていただき、文化庁と相談をしていきたいと思っています」とあり、 平成30年3月30日には「基本計画書」の取りまとめができていないと報告している。


 すなわち、 平成30年3月30日には「基本計画書」は完成しておらず、基本設計業務は完成していない。

 つまり、基本設計代金として約8億4千万円を名古屋市はすでに支払っているにも関わらず、その起点となるべき「基本計画書」の「策定」が「22年度末までに基本計画書策定」と新聞紙面にタイトルとして書かれ、この支払の不当性、計画の杜撰さ、遅延、ごまかしについて一切触れていない。中日新聞の記者は疑問を感じないのか?

 書いてあるんですよ!

 契約書に付随した「仕様書」に、わざわざ一条を設けて「建築基本設計は、以下の項目について行う」とされた、たった2項目の内の1が「基本計画書」で、その策定が「22年(令和4年)度末までに」って、おかしいでしょ、どう考えても。

※もう一つの傍証

f:id:ichi-nagoyajin:20211112094003j:plain
竹中提案書

https://app.box.com/s/ff3ykt80mtkbmfcvoo27khekujr296id/file/775762376032

 この竹中の提案書、PDFとしての31ページ目「実現性のある許認可・契約スケジュールに則り、各協議事項を適切に推進することで史実に忠実な木造復元を行います」では「基本設計」の前段階、「0フェーズ」において、文化庁「復元検討委員会」に「基本計画書」を提出し、建築の大まかな仕様について承認を得てから、基本設計にかかる(1フェーズ)となっており、「基本計画書」がなければ「復元方針」も「建築仕様」も確定しておらず、「基本設計」そのものができない。

 更に笑うのは、一審公判において、名古屋市は「基本計画書」は「基本設計説明書」に<混ぜて>収められていると、説明しているのだが、じゃあなぜ今更「22年度末までに基本計画書策定」としているのか?

https://app.box.com/s/xdodxcc3ngtoso5qlo4docfwrdyddrl5


 人間、嘘を一つつくと、嘘に嘘が重なってしまうものだが、この名古屋城木造化の大嘘は、それだけでお城が立ちそうだ。河村たかしが嘘をついて、名古屋市が必死でごまかし、中日新聞が見てみないふりをした。そんな事している間に、引き継いだ市政記者は本当に理解できなくなっていたのかもしれない。この名古屋城木造化問題、暴けば暴くほど、呆れたような嘘が現れる。フリーライターの方々は、これ絶好のネタだと思いますけどね。言ってみれば、中日新聞が煽り上げた豚が、高い高い木に登っていて、ここに真実という光を当てるだけで、派手なアトラクションが見られる。

 その他にも、この記事には「常識で考えておかしなところ」がいくつもある。

1.着工、完成時期は未定

 名古屋市がこれからPTなどを組んで、「調査」でもするのであれば「着工、完成時期は未定」は理解できるが、すでに基本設計業務は完成したとして代金も払い、実施設計業務契約も結ばれたような建築計画の「完成時期は未定」などという話は成立しない。建築における請負契約としても異常とのこと。

2.解体方針を盛り込む

 現天守の解体について、名古屋市民は説明を受けておらず、意見も汲まれていない。本当にどれほどの市民が、現天守の破壊に賛成するのか、公平な議論と民意の聴取をすべきだ。

3.新天守(木造天守)の重みを支える基礎構造の検討

 さて、これ最大の問題です。後述します。

4.出席した河村市長は「必ず実現できますから。以前言ったとおり責任を取ります」と断言した。

 河村たかしが「責任」を取った前例を教えてほしい。

 ちなみに、木材の買付予算について、議会は「確実に木造化が実現できる目処がたった上で買うこと」という付帯決議(条件)を付けた。ところが、木造化は上に言うように「着工、完成時期は未定」であり、いつ実現できるか不明のままだ。にもかかわらずそれでも、議会の付帯決議を無視して買い付けてしまった木材の保管に一年当たり約1億円がかかっているとの事だ。

www.nagoyajo.city.nagoya.jp

 議会の付帯決議(条件)を聞いておけば、支払わなくてもよいこの保管料は、余分な経費であって、「責任を取る」というのであれば、河村たかしが個人負担すべきではないのか。なぜ、木造化の目処もたたない内に議会の付帯決議も無視して木材を買ってしまったのか。普通(?)であれば「癒着」が疑われる。業者と癒着して、不要不急の歳出を起こして、キックバックをせしめようというオールドファッションの政治の姿だ。我らが名古屋市長、河村たかしはそんな金には手を付けない。そんな知恵もなければ、なにより根性がない。小心者の河村は、せいぜい飯をおごってもらう(しかし、自分で1000円払うから、「割り勘」)か、シャツを(もう一着)せしめるぐらいしかできない。焦って木材を買付、約100億円の無駄金と、年間1億円の管理費を発生させた原因は選挙だ。あたかも名古屋城木造化事業が進んでいるように見せかけるために、先行取得したわけだ。河村の事情で先行取得して、余計な経費がかかっているのであれば、河村に責任をもって負担してもらうのが筋というものだろう。

5.2019年に、工期短縮を図るために解体のみを先行申請した

 これは嘘だ。現に工期は短縮されていないし、先行解体しても工期は短縮できない。それどころか後述の問題が解決されなければ、名古屋は名古屋城を失うところだった。

20180205003854

 どういった理路で「そんな勘違いをしたのか」なぜ「先行解体」しようとしたのか、ジャーナリストなら追求すべきだろう。

 本当は簡単だ。河村たかしが東京に行く(文化庁に行く)時、必ず選挙が近い。選挙の際「何も動いていない」と言われたくないために、動いているふり、進んでいるふりをしているに過ぎない。この記事にしても、すでに平成30年に代金を支払った「基本計画」の「策定」を「22年度末」にすると言っている「遅延」を書かず、あたかも事業が進んだように書いている。河村たかしの選挙利用に手を貸している。

さて、「3.新天守(木造天守)の重みを支える基礎構造の検討」ですが。

 現在の名古屋城天守は、戦災で焼け落ち、鉄骨鉄筋コンクリートで再建される際に、石垣内部にやはり鉄骨鉄筋コンクリートの「ケーソン」と呼ばれる基礎構造、土台を埋め込んだ。現在の鉄骨鉄筋コンクリート天守はこのケーソンの上に乗っていて、石垣そのものには荷重はかかっていない。今回、天守を木造にするにあたって、竹中は木造天守も石垣に荷重をかけず、このケーソンの上に設置するつもりで居た。ケーソンから鉄骨鉄筋の土台を広げて、その「跳ね出し」の上に木造天守を乗せる提案をしていた。これを「跳ね出し架構」と呼ぶ。この「跳ね出し架構」は石垣に荷重をかけないが、設置するには石垣の上部を一度取り除き、「跳ね出し架構」を設置した後に石垣を組み直す必要がある。

 これにダメが出た。

 「名古屋城天守を木造化する事には吝かではないが、石垣に触れることはならん」

 まるでベニスの商人におけるポーシャの判決だ。

 つまり、名古屋城木造化天守、建てるのは構わないが、一切石垣に負担をかけてはならないし、工事によって石垣に触ることも相成らない。建築物の基礎構造など、「検討」するような類の話ではないだろう。「検討」しなければならない、こんな事について、現代の常識的な技術で対応ができないのは、つまりはできないということだ。「肉一ポンドを切り取るために、血の一滴も流さない方法」を示せと言われている。木造で建てて、河村たかしがずっと持ち上げていればいい。

 11月9日の経済水道委員会でも、自民党の浅井正仁委員が「全名古屋市民が建て替えると言っても、石垣が崩れるなら国は止める。それが国宝」と強く主張されていた。

 物理法則は民主主義ではない。民主主義は事実を元に議論されなければならない。民主主義で事実を曲げることはできない。
 現在の石垣を一寸も侵食しないような建て替え方、基礎構造は無い、「検討」などまやかしだ。
 
 つまり、名古屋城天守木造化はできず、河村たかしはその全責任を取るべきだ。


 もう一つ、敷衍させていただこう。
 「物理法則は民主主義ではない」
 
 現在の計画では、大天守から地上に至る「脱出経路」が一つしか無い。もし、この経路の途中で出火したら、大天守に滞留している不特定多数の観光客(約3千人)は、避難経路を失うことになる。そうした場合の被害を想像するだけでも恐ろしくなる。そして、そんな殺人建築物の消防評定、建築許可を出した者は、殺人に加担したことになる。

 いくら無責任な馬鹿が人事権をチラつかせてハンコを求めてきても、許してはならない、高圧的な政治の暴力に抗する、理性の最後の*1が行政だからだ。
 


*1:理性の最後の砦は「司法」だった。しかし、昨今ではとんと信頼が置けない。