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名古屋城木造化事業住民監査請求陳述原稿

10月24日 午後3時30分より、名古屋市監査委員において、住民監査の陳述を行ってまいりましたので、その原稿をここに転載します。

名古屋城天守の有形文化財登録を求める会

・あいさつ

 今回の監査請求人の一人であります、北区在住の森と申します。
 本日はこうした機会を設けていただき感謝申し上げます。

・録音について

 監査請求人は158名となっており、すべてのものがこの場に同席することはできません、そうした事から本日の会議について議事録を公開したいと考えております。

 その為にお許しを得て会議の録音を取らせていただきます。

 なお、この音声データにつきましては直接公表することはございません、どうぞご了承いただきますようお願い申し上げます。

・請求の概要

住民監査請求書
事実証明書

 請求の概要については請求書に書かれているとおりであり、お読みいただいてその趣旨はご理解いただけているものと考えますが、端的に申しまして、今次の名古屋城天守閣整備計画、いわゆる木造化計画において、その基本設計委託業務が完成しておらず、未完成の基本設計に対して名古屋市が代金を支払ったことについて、違法と考えますので監査によってご確認をいただきたいという趣旨でございます。

 基本設計が成立していないとする根拠は、本件事業が国の特別史跡の中で行われることから、文化庁の復元検討委員会の同意、及び文化審議会の諮問が必要になる。つまり、文化庁の同意がないものを名古屋城跡に置くことも建てることもできない、との、文化財保護法及び、特別史跡名勝天然記念物又は史跡名勝天然記念物の現状変更等の許可申請等に関する規則が根底にございます。

 そして名古屋市においてもこの法的条件は充分に認識されており、甲7号証でお示しした「業務要求水準書」において「木造復元に際し、実施設計に着手する前の基本設計の段階において、文化庁における『復元検討委員会』の審査を受け、文化審議会にかけられる」と定めておりますし、甲8号証でお示しした「回答書」においても「文化審議会にかけられるのは、基本設計の段階」であることを名古屋市は明確に回答されております。

 さらに、甲2号証「業務委託概要書」には「文化財保護法に基づく現状変更許可の申請に必要な業務」として「申請書類の作成」が明示されております。

 しかるに、本件事業においては文化庁における「復元検討委員会」の審査や、文化審議会の諮問結果は今日に至るも得られておらず、文化庁より求められる建築の仕様について確定しておりません。つまり、名古屋市が定義した基本設計の要件を満たしておりません。

 ゆえに、基本設計は未完成であり、甲5号証にお示しした「支出命令書」は未完成の基本設計図書を完成と誤認したものであります。

 名古屋市会計規則 第71条には「会計管理者等は、支出の命令書により地方自治法第232条の4第2項に規定する確認をするものとする」とされておりますが、このような無効な支出命令書によって行われた支払いは是正されるべきです。

 地方自治法第232条の4第2項 において「会計管理者は(中略)当該支出負担行為に係る債務が確定していることを確認したうえでなければ、支出をすることができない」とされているのであり、未完成の基本設計図書に対して、その代金が支払われたことは違法であります。

 また、名古屋市契約規則 第53条では「工事その他の請負及び物件の買入れにかかる契約の契約代金の支払は、当該契約の目的物についての検査を完了し(中略)たのちでなければすることができない」とされているものであり、当該支払い行為は是正されるべきです。

 また、基本設計が完了していないという事は、甲6号証でお示しした実施設計業務契約につきましても、業務内容にある「設計図書のとおり」とされる基本設計図書が未完成ですので無効であり、この契約も取り消されるべきです。

 上記基本設計図書が未完成であり、実施設計契約も無効となれば、当然本件事業の計画に遅延が発生いたします。しかるに名古屋市会6月22日 本会議における浅井正仁(まさひと)市議の質問に対する廣澤一郎副市長並びに渡邊正則観光文化交流局長の答弁によれば、本件事業において、すでに木材購入費用が予算計上されており、これを購入した場合、その保管代金が一年間で約一億円発生する恐れがあるそうであります。暫定的な損害拡大防止措置として、地方自治法242条3項に定める通り、本件事業の停止を求める次第であります。

・甲5号証「支出命令書」の信憑について

 つまるところ、今回の論点は甲5号証の「支出命令書」の信憑についての議論になるかと思われます。私たちはそれが誤認であると主張致しますが、こうした誤認がなぜ起きたのか、またその信憑性がいかに脆弱であるか。今回の監査請求書の(7)から(13)の主張はそこに主眼が置かれております。

 ここで、今回お許しをいただいて提出させていただきました「追加証拠」についてご説明をさせていただきます。

・追加証拠

基本設計説明書

基本構想案


 追加証拠は2つございまして、一つは一枚目が「行政文書一部公開決定通知書」になっているもの、もう一つが「復元整備基本構想案」であります。

 まず、「通知書」の方をご覧ください。これは3月30日に受注者が収めた基本設計図書について、名古屋市オンブズマンが情報公開請求を行い、5月18日に公開が為されたものの一部です。

 見ていただくとお分かりのように、ほとんど真っ黒で内容は判りません。

 公開に当たり、「行政文書の一部を公開しない理由」が通知されております。

 理由は4つあり、(1)は受注者における個人情報。(2)は受注者の独自技術に関する情報。(3)は文化庁との協議に関わる情報。(4)は工事費の積算に関わる情報です。

 これらはそれぞれ条例を根拠とした正当な非公開理由であると考えます。

 さて、この「通知書」に続く部分、これは「基本設計説明書」の最初の一部ですが、ページ数が多いので主には16ページを1枚の紙に縮小して表示しております。そしてその一部を一枚ものに拡大しております。

 一番最初の真っ黒のページをご覧いただけますでしょうか。右上に「1−1特別史跡名古屋城跡の保存活用」という文言が見えます。また、右下には「1」という数字が二重写しになっている様子が見て取れます。

 さて、ここでもう一つの「復元整備基本構想案」のページをめくっていただけますでしょうか。すると、右下に「1」という数字が書かれ、右上に「1−1特別史跡名古屋城跡の保存活用」と書かれたページがある事がわかります。

 黒塗りを2枚めくっていただきますと、右下に「11」右上に「1−3現天守閣の価値」と書かれたページがございます。「構想案」の方も2枚めくっていただきますと、同じ右下に「11」右上に「1−3現天守閣の価値」と書かれたページが確認できます。

 同じように、黒塗りを2枚めくると右下に「27」右上に「1−4天守復元の意義」と書かれたページがあり。「構想案」の方も2枚めくっていただきますと、同じ記述が確認できます。黒塗りの最後は「42」であり「1−6活用の考え方」が書かれており、「構想案」も最後は同じ文言です。

 つまり、黒塗りにされた「基本設計説明書」のこの部分は「構想案」を写したものであると推測されます。「構想案」はすでに平成29年12月に公開されている情報であります。

 さて、その推測が当たっているとすると、果たしてそれをほとんどすべて黒塗りにする理由は何なんでしょうか?

 先にべた(1)から(4)の理由の内、もし本文に受注者の個人情報が追記されているのであれば、その部分を非公開にすべきでしょうし、(2)から(4)についてはすでに公開されている情報であればいまさら、非公開にする理由はありません。

 なんらかの事情により不整合な事務が行われているという蓋然性が高い。

・超過勤務の状況

 少々外れるかもしれませんが、この9月決算審議で担当部局である観光文化交流局における超過勤務の状況が報告されております。名古屋市の総務局は職員に対して600時間以上の超過勤務はさせないようにとの通知を出されているようですが、当部局では25人がこの600時間を超えて超過勤務をしているようです。1000時間を超える超過勤務をしている職員も28年には5人、29年には3人いらっしゃったとの事です。

 私どもは受注者や特定の職員を告発するつもりも、責任の追及をするつもりもございません。こうした部局における人員配置も含めたガバナンスの喪失が、今回のような納品物に対する誤認を引き起こしたのではないでしょうか。

 当事業は当初、2020年東京オリンピックにおける名古屋の観光の目玉とされ、事業者のプロポーザルの募集も行われました。しかし完成時期は2022年になり、それすらも危ぶまれております。

 このような不整合がある今、2022年にこだわる理由が判りません。ここは適正な行政の為にも一旦事業を止めるべきではと考えます。

・最終陳述

 私も建築業ではありませんが、受注契約、受託契約は幾つも取り結びました。

 主には民間企業間の業務ですが、公共事業に係るものもあります。それらの納品や納品検査、検収作業も経験しております。

 そうした観点からすれば、この欠品は「一部の欠落」とは言えません。

 他の仕様を確定させる為の、起点とも言うべき作業が行われておらず、それが成立していないために、或いは、すべてのやり直しを強いられかねない欠落であります。

 総額で約504億円、当設計業務だけでも8億4693万6千円の作業に対する納品検査としてはずさんであり、ありえません。

 この事業は当名古屋市の行政の長である市長が、政治生命をかけるとまで言われている事業であり、全職員にとっては、その事業に対し疑問を持っても、なかなか口には出せないであろうとは思います。(この部分は陳述から削除しました)


 我々の提起した監査請求について、容れられない場合は、当然我々は訴訟を提起いたします。

 第三者であり、公平、公正な司法の場で判断を仰ぐ所存です。

 その場合、我々の主張が容れられる事には確信を持っております。

 誰が見ても、甲2号証である「業務委託概要書」に示された「申請書類」が甲12号証である「成果品目録、一覧」に記載されておらず、その代わりに「原稿」が納品されているとなれば、それが不十分であることは一目瞭然であるからです。

 しかし、司法という外部の判断を待つのではなく、伝統と格式のある、指定都市名古屋市の行政における自律と自治の為に。

 名古屋市監査委員の皆様の矜持によって、適切で公正な歴史的判断を下されん事を期待いたします。