市民のための名古屋市会を! Ver.3.0

一人の名古屋市民が「地域委員会制度」「減税日本」に対する疑問をまとめるサイトです。(since 2011/3/3)

一隅を隠ぺいする

このところわけあって名古屋城天守木造化に関わる書類を精読させていただいている。非常に面白い。

名古屋城木造化に賛成する人々は、本当に無責任である事が判る。
あなたは、自分が何に賛成しているのか判っているのだろうか?

名古屋市が進めようとしている名古屋城木造化計画は情報公開がなされていない。
何ができるか判りもしないで、500億円以上の工費公費が費やされる事業に賛成できるというのは、目を瞑って、またはスマホでゲームでもしながら車を運転するに等しい。無責任な行為だ。

追記:
内容が分からないなら、それに対する批判もまた無効なのではないかという意見をいただいた。上の「目をつむって車を運転する」という例と等しい。
車を運転している時に目をつむらざるを得なくなったら、車を止めるだろう。
内容が分からないのであれば、とりあえず立ち止まるべきだ。
計画を進めることと、それに反対することでは立証責任が異なる。計画を進めようとする者は、そのリスク(文化財である現天守を破壊することと、500億円以上の公費を支出すること)に見合った正当性を証明する責任がある。止めようとする者にはその責任はない。

名古屋城天守閣整備事業 復元整備基本構想案(以下、「構想案」)
(平成29年12月 名古屋市観光文化交流局名古屋城総合事務所)

http://www.nagoya.ombudsman.jp/castle/171225-7.pdf


名古屋城天守閣基本設計業務 基本設計説明書(以下、「説明書」)
(平成30年3月30日 株式会社 竹中工務店

http://www.nagoya.ombudsman.jp/castle/180518-1.pdf


「説明書」はほとんど黒塗りで内容が判らないが、右上の項目名と右下のページ数は読める。

この概要偏の中を見てみると(括弧の中はPDFとしてのページ数、右下のページ数)
1-1 特別史跡名古屋城跡の保存活用(5、1)
1-1 特別史跡名古屋城跡の保存活用(8、2)
       :
1-1 特別史跡名古屋城跡の保存活用(13、7)

「説明書」の右下のページ数は「構想案」のページ数とまったく符合する。

1−2 名古屋城天守の変遷(14,8)
       :
1−2 名古屋城天守の変遷(16,10)

「説明書」の右下のページ数は「構想案」のページ数とまったく符合する。

1−3 現天守閣の価値(17,11)
       :
1−3 現天守閣の価値(30,24)

「説明書」の右下のページ数は「構想案」のページ数とまったく符合する。

1−4 天守復元の意義(31,25)
       :
1−4 天守復元の意義(34,28)

「説明書」の右下のページ数は「構想案」のページ数とまったく符合する。

1−5 復元次代時代の設定の概要(35、29)
       :
1−5 復元次代時代の設定の概要(46、40)

「説明書」の右下のページ数は「構想案」のページ数とまったく符合する。

1−6 活用の考え方(47,41)
       :
1−6 活用の考え方(48,42)

「説明書」の右下のページ数は「構想案」のページ数とまったく符合する。


もう一度確認すると、「構想案」は作者が「名古屋市観光文化交流局名古屋城総合事務所」で平成29年12月の作である。

「説明書」は「株式会社 竹中工務店」の成果品で平成30年3月30日の作成日付となっている。

一般的な常識で考えれば、発注者の名古屋市が示した「特別史跡名古屋城跡の保存活用」から「活用の考え方」までの42ページを、竹中工務店が受けて転記記載したと取れる。

その傍証に、目次には「−1.復元概要・復元整備基本構想(更新)」とあるので、「構想案」を「更新」したものということかもしれない。
または、そもそも29年12月に名古屋市の名前で提示された「構想案」自体が竹中の成果品で、その著作者を名古屋市として公表したのかもしれない。(基本設計の契約書には、成果品の著作権は発注者、名古屋市に移譲されるとあるので、問題は無いだろう)

私が強く違和感を覚えるのは、「では、なぜ「構想案」は情報公開されて、「説明書」は黒塗りになっているの?」ということだ。

名古屋市が説明するような黒塗りにする理由が本当にあるのだろうか?

上記PDFファイルは「名古屋市オンブズマン」が情報公開請求をした結果得られたものである。

「説明書」について黒塗りになっている理由として名古屋市は次のように通知している。

・株式会社竹中工務店の従業員の氏名に関する部分については、特定の個人を識別することができるもののうち、通常他人に知られたくないと認められるため(名古屋市情報公開条例第7条第1項第1号)、非公開とします。また、同社において外部に公開していない電話番号については法人の内部管理に関する情報であり、公にすることにより法人の事業運営に支障をきたすと認められるため(名古屋市情報公開条例第7条第1項第2号)、非公開とします。

・株式会社竹中工務店保有する独自の技術に関する部分は、公にすることにより法人の通常有する競争上の利益が損なわれると認められるため(名古屋市情報公開条例第7条第1項第2号)非公開とします。

文化庁等との協議に関する情報については、当該情報が公開されることにより、率直な意見の交換若しくは意思決定の中立性が不当に損なわれる恐れがあるため(名古屋市情報公開条例第7条第1項第4号)、非公開とします。

・工事費の積算等に関する部分は、公にすることにより名古屋城天守閣整備事業に関する事務の公正又は適正な遂行に支障を及ぼすおそれがある情報を含むため(名古屋市情報公開条例第7条第1項第5号)、非公開とします。

http://www.nagoya.ombudsman.jp/castle/180518.pdf

この4項目の内、どれに当たるのだろうか?
1項目目の竹中社員の個人氏名や電話番号が書かれていても、その部分だけ黒塗りにすれば良いだろう。内容の大部分が「構想案」のまる写しであるなら、すべてを黒塗りにする必要はないだろう。

2項目目の独自技術や競争優位性保護とするのであれば、「構想案」で公開されている事で無効だ。「構想案」に独自技術で変更が加えられているとしても、その更新部分だけ黒塗りにするべきだろう。3項目目や4項目目に該当するとも思えない。(「構想案」で公開されている事で同様に無効だろう)

これは、不当な情報隠ぺいだ。

名古屋市において、真っ当な行政執行が行われているのであれば、何も隠ぺいする必要はない。堂々と公開すればいい。なぜ、隠ぺいするのか。

なぜ、こそこそと隠れるのか!

卑怯者!

心にやましいところがあるからだ。

嘘をついているからであり、その嘘の自覚もあるからだろう。

この自覚も無くなったら、本当に異常だ。

名古屋市職員の諸君。
または、観光文化交流局名古屋城総合事務所保存整備室の諸君。

君たちは、名古屋市政にこのように歪んだ、非民主主義の姿を残して心は痛まないのか?

建設会社のコマーシャルに「地図に残る仕事」というキャッチコピーがある。
私も自分が携わった仕事が商品として社会に出まわった時には誇らしく思ったものだ。

仕事というのは、何も9時から5時までの我慢大会ではないだろう。
やはり自分の携わった仕事が、社会になんらかの影響を与える。こうした手ごたえを感じられる仕事をしたいものだし、そうした仕事の積み重ねがあって、自分自身の人生を振り返った時に満足が得られるのではないだろうか。

「照于一隅、此則国宝」

人間の力には限界がある、自分の手の届く範囲で、その職責の範囲に明かりを灯す者を伝教大師も「国宝」と表現している。(この国宝は、本当の国宝だ)

この言葉とは逆に、片隅の明かりを消し、情報を隠ぺいする事が本当に有為な仕事だろうか。

いやしくも名古屋市の職員であれば、地域のエリートである、それだけの能力も訓練も積んできている筈だ。その能力や知識を、情報隠ぺいのために使うのだろうか?

行政に携わるのであれば、その仕事は地図にも残るし「歴史」にも残る。

あなたは、あなたの名前を「隠ぺいした役人」として「歴史」に残したいのだろうか?

・・・仕事に愛情を感じられない事は不幸だ。仕事に誇りを持てない事は不幸だ。
愛情をかけられない仕事、誇りに感じられない仕事は、そのディテールを見れば判る。

この「説明書」右下のページ数は2重写しになっている。

「構想案」を印刷する際に、本文にページ数が印字されている事を無視して、ページ数を付加して印字したからだろう。仕事が雑だ。愛情をかけられていない、誇りに思われていない仕事の姿だ。

こうした仕事は「ミス」を誘発する。

基本設計業務委託仕様書の21条には「(5)」は無い。

その他にもミスは幾つもある。
中には数億というお金がかかっているミスもあるかもしれない。

そろそろ、隠ぺいはやめて、あらいざらい曝け出した方が良いのではないだろうか。



追記(9月22日):
ご指摘を受け情報公開の不当性についての「審査請求」を行ってきました。

しかしここでも不当な窓口対応が行われました。
受理しないと主張したのです。

理由は2つあります。
1.黒塗りされた情報公開はオンブズマンにされたもので、その不服審査は当事者でなければできない。
2.規則には事実を知ってから3か月以内の審査となってるので5月に開示した情報公開に対する審査期間は過ぎている。

馬鹿なこと言っていてはいけない。行政不服審査請求の趣旨は、行政事務の是正であって、その不服審査請求があった場合、それは広く受付、行政に瑕疵が無いように保たれなければならない。今回の事例のように明らかに不当な隠ぺいであれば、それを報告された職員が、窓口の職員自身が、内部的に是正するように動くべきだ。公務員には違法行為を是正する義務がある。

更に言うのであれば、こうした窓口での「水際作戦」はあまりに知恵が無さすぎる。なぜなら、
では、私がもう一度同じ情報公開請求を行えば、2週間後には同じ黒塗りの文書が提示されるわけであって、そこから不服審査請求すれば受け取り拒否の2つの理由は排除される。意味のない拒否だ、却って行政事務が繁多となるだけだろう。
情報公開は、市の行為であって、請求者と市の行為ではない。市の行為自体が不当で是正されるべきものであれば、誰がその不当性を指摘したとしても市が自主的に是正すべきだろう

更に更に言うのであれば、こうした指摘に対して、組織を是正する方向に頭が回らず、組織を表面的に庇う方向に頭を回すのは、組織を守っているように見えて実は組織を腐らせる行為だ。大企業の検査偽装や書類の改ざんなどで明らかになたことは、こうした行為と、その隠蔽は組織を内部から腐らせていたということだ。
生体において、空気の流通(強力な「毒」でもある酸素の流通)が、疎外されれば生体が腐るように。
内部的な監査、不正行為の是正が疎外されれば組織は腐る。
組織内における不正行為は、その芽の小さい内に摘み取るべきであろうし、それを庇う事は却って組織そのものを弱体化させる。

そして、魚も、組織も、頭から腐る。
腐り、腐臭を上げているものは、切り取って捨て去るべきだ。