市民のための名古屋市会を! Ver.3.0

一人の名古屋市民が「地域委員会制度」「減税日本」に対する疑問をまとめるサイトです。(since 2011/3/3)

「近世城郭の保護についてのメモ」のメモ

私は本来ガサツな人間であり、そもそも文化を語るような人間でもない。
型式ばった文化よりは、下町の路地に響く三味線の音のような風俗に親和的であり、その一派生としての「サブ・カルチャー」に親しみを感じる。

本来、メインストリームの「カルチャー」があっての「サブ・カルチャー」なのだが、最近ではメインストリームの「カルチャー」自体が根拠を失っている。その根が腐っている。その為、「サブ・カルチャー」の住人がわざわざ「カルチャー」を再定義する必要まで出てきていると思える。今般の問題(名古屋城天守木造化騒動)なども将にそれであり、一地方自治体が認めた「有識者」たる、本来メインストリームのカルチャーを担うべき者たちが、文字通り「曲学阿世」金や名誉でその学問的権威を売り、文化を歪めているのだから、お笑いである。ある意味「サブ・カルチャー」の住民としては高らかに勝鬨を上げたい気分になる。


以上のようにメインストリームの文化とは程遠い自分であるので、スタンダードでオーソライズされた(標準的で公認された、または権威的な裏付けのある)認識を理解するために、「文化庁文化財部記念物課」の佐藤正和さんの「近世城郭の保護についてのメモ」という文章から、勉強させてもらう。この文章はそのメモとなる。

原版はこちらにある。

https://repository.nabunken.go.jp/dspace/bitstream/11177/6600/1/BB25180515_135_142.pdf

黒板勝美の「分類」が「史蹟名勝天然紀念物保存要目」に反映されている → 文化財の保護に影響力のあった人物。

黒板勝美 - Wikipedia

黒板は「古社寺保存法」を批判し、現代より過去のものはすべて保護すべきであると主張した。古い時代に手厚く、新しい時代に薄い建造物の保護の在り方を批判したのである。(略)
現代とはいつからとの問いに黒板は「大概50年」と述べている。

文化財としての保護の対象となりうるものは「大概50年」を超えたものである。


『史跡等整備のてびき』(平成16年)
CiNii 論文 -  史跡等整備のてびき-保存と活用のために, 文化庁文化財部記念物課監修, (株)同成社, 2005年6月30日発行, B5判, 4分冊, 総頁1349頁, 12,000円+税

『史跡等・重要文化的景観マネジメント支援事業報告書』(平成27年
史跡等・重要文化的景観 マネジメント支援事業 報告書 - 文化庁


『史跡等整備のてびき』刊行以後、史跡の価値を「本質的価値」という言葉で表現することが一般的となった。

しかしながら史跡の価値を個々に検討してみると、本質的価値という言葉が果たして適当な言葉(概念)なのか、疑問を感じる場面が少なくない。本質的価値は「本質的でない価値」を前提にした概念である。前提という言葉が適切でないとするなら、少なくとも「本質的でない価値」を一方に措定した概念である。本質的価値を抽出することによって、それを保護しなければ史跡の要件を欠くことになる、という議論が展開する。と同時に、「本質的でない価値」は壊れてもよいという議論を伴うことになる。個々の史跡において、そのような乱暴な議論が行われているとは思えないものの、論理的にはそうなるであろう。本質的という言葉は、一見学術的な印象があるが、よくわからない言葉でもある。

名古屋市:特別史跡名古屋城跡保存活用計画(市政情報)

今、名古屋城においては「保存活用計画」の第3章によって昭和27年までの歴史が「本質的価値」を形成する根拠とされるのであって、それ以降の歴史は「本質的でない価値」であり「壊れてもよいという議論」がなされている。佐藤氏は良識的に「そのような乱暴な議論が行われているとは思えない」といわれるが、まさに! そのような乱暴な議論が行われているのが名古屋市であり、その「有識者」と呼ばれる者たちの議論なのである。

※いま調べてみると、この「有識者」の名簿が名古屋市のHPから消え去っている。
「歴史に残る」決定を下すのだから、その名は永遠に刻まれなければならない。

特別史跡名古屋城跡全体整備検討会議
(24回、欠席者も幾人かいるようだ)

構成員
座長:瀬口哲夫(名古屋大学名誉教授)
副座長:丸山宏(名城大学教授)
小浜芳郎(名古屋市立大学名誉教授)
高瀬要一(公益財団法人琴ノ浦 温山荘園代表理事
三浦正幸(広島大学大学院教授)

オブザーバー
野口哲也(愛知県教育委員会生涯学習文化財保護室主任主査)

石垣部会
北垣聡一郎(石川県金沢城調査研究所名誉所長)
千田嘉博奈良大学教授)
宮武正登(佐賀大学教授)

天守閣部会
小野徹郎(名古屋工業大学名誉教授)
西形達朗(関西大学名誉教授)

追記:
天守閣部会については全員保存しておくべきだとのご意見とともにリストを送っていただいた。

天守閣部会
瀬口 哲夫 (名古屋市立大学名誉教授)
小野 徹郎 (名古屋工業大学名誉教授)
片岡 靖夫 (中部大学名誉教授)
川地 正教 (川地建築設計室主宰)
西形 達朗 (関西大学名誉教授)
麓  和善 (名古屋工業大学大学院教授)
古坂 秀三 (立命館大学客員教授
三浦 正幸 (広島大学大学院教授)


佐藤氏は次のように指摘する。

不動産文化財である記念物は、価値の重層性という特徴を持っている。分解よりも、その変遷を跡づける総合(統合)の論理こそが求められているのではなかろうか。

こういった見解こそが「サブ・カルチャー」には到達できない、スタンダードでオーソライズされたカルチャーの凄味であって、この立脚点に立っていない「有識者」は「有識者」たる要件を欠くだろう。
日本の大学が力を失っているが、こういった文化の継承が失われているとするのであれば、その病根は膏肓にまで達しているのではと危惧する。




掛川城跡の天守復元

掛川城天守はその意匠について問題があるばかりでなく、天守の復元を目的としたために、史跡の重要な構成要素であった天守台及び石垣を破壊してしまったことになる。

戦後のいわゆる復興天守を、鉄筋コンクリート造であるから偽物であり、価値がないという議論は短絡的である。城跡の近代あるいは現代を評価する必要があるであろう。一方で、本来保護すべき遺構を破壊して建造物を建設することの愚も認識しなければならない掛川城天守の建設は、新しい時代の始まりではなく、古い時代の終わりであったのではないか、という本稿の趣旨はそうした、城跡の近代・現代を考える一つの材料である。



次に、国際的にオーソライズされた文化財保護への見解を確認するために日本イコモス国内委員会の「文化財の総合的な保護施策の確立のために」という文化審議会文化財分科会企画調査会「中間まとめ」についての意見書を見てみよう。


文化財の総合的な保護施策の確立のために―
文化審議会文化財分科会企画調査会「中間まとめ」についての意見書
日本イコモス国内委員会 平成29年 9 月 21日

http://www.japan-icomos.org/pdf/bunka201709final.pdf

文化財保護の意義)
文化財保護は、文化財の価値を将来の世代へと長く維持継承していくための保存が第一義であり、その適切な保存が確保された上で、文化財の価値を知り、楽しむための文化的活用を進めるものである。適切な活用が文化財保存の必要性への理解を深め、保存への推進力になるのであって、保存と活用を同列に考えてはならない。

(保存修理と活用事業)
・地域の活性化や観光振興等に文化財の果たす役割はますます大きくなると予想されるが、慎重さを欠く活用は、文化財消費財へと貶め、現在及び未来の地域資源、観光資源等としての価値をも失しめるものである。

持続可能な開発目標(SDGs)2030

・基本計画は文化財保護法に位置づけられるものであり、その策定にあたって全国的な基準を示し、個々の基本計画について認定し、また、実施状況の点検・評価等を行うなどの業務は、文化財保護施策の責任官庁である文化庁の重要な任務である。この任務が確実に遂行されるよう、担当人材の確保等必要な体制整備を急ぐ必要がある。

現在のように各地方自治体が保護主体であり、文化庁はその「基本計画」を「見るだけ」であるのなら、保護政策を投げ捨てるものであり、名古屋市に見られるように、歪んだアジテーションがなされ、真っ当な民意の評価もないまま文化破壊がなされる可能性もある。
こうなった以上、各地方自治体の管理能力に信を置くことはできず、国において適切な管理権限を持たせる必要があるだろう。

・市町村の基本計画策定とその推進にあたり、国及び都道府県は継続的な指導と支援を行う必要がある。特に市町村による文化財の総合的な保存活用にあたっては、都道府県の指導的役割は大きく、すべての市町村において齟齬なく充実した文化財保護が行われるよう、積極的な指導助言、調整等を行う必要がある。現状において、市町村の文化財保護の体制の格差は大きいので、拙速は避け、必要な人材の確保等を見極め、段階的な対処について考慮する必要がある。

・基本計画は、「文化財のマスタープラン」とされているが、都市計画法における「都市マスタープラン」等と同様に、定期的な実施状況の客観的レビューとそれに基づく見直し、及び文化庁による認定の再審査システムを組み込むことが必要である。

常に「基本計画」は議論の俎上に乗せられるべきである。何となれば文化財というものは、重層的な時の中でその存在価値が編成し、積み重ねられていくのだから。いやしくも「基本計画」に対して寄せられた市民の意見を数カ月も置かず隠ぺいするような事はあってはならない。
そのような地方自治体からは管理権限をはく奪するべきである。民主的な運営ができない地方自治体に、国民の貴重な宝である文化財の処分権限を与えてはならない。

・基本計画は、総合的かつ中長期の計画であり、国による認定制度が組み込まれることにより、首長の交代等により起こり得る急激な内容変更の動きを抑制することができ、安定的に施策が推進できる。

(歴史的建造物等の活用と建築基準法
重要文化財建造物等のほか、文化財保護に関する条例その他の条例によって現状変更の規制や保存の措置が講じられている建物であって建築審査会の同意を得て指定された建造物(保存建造物)は建築基準法の適用除外とされている。しかし、実際には安全性の確保等の観点から、この適用除外措置は簡単には得られない。このため、文化財としての価値の維持と十全な安全性を確保した上での用途変更や一部改修など、活用のために必要な行為が困難になっている。いわゆる「その他条例」が京都市横浜市兵庫県等のいくつかの地方自治体で制定され、建築行政サイドで歴史的建造物の利活用についての努力が続いているが、文化財保護施策としても、文化財的価値の維持継承に留意しつつ、適切な活用推進のための検討を行う必要がある。

日本イコモス学会も利活用を否定しているわけではない、しかしそれは前述したように「文化財の価値を将来の世代へと長く維持継承していくための保存が第一義であり(略)保存と活用を同列に考えてはならない」という前提の上での話なのだ。


北海道で地震が発生し甚大な被害が発生したようだ。
被災された方々に心よりお見舞いを申し上げる。

こうした地震発生を受けると「耐震性の為に名古屋城天守を木造復元する」という虚言の恐ろしさがいやがうえにもしみる。

慶長の設計である木造軸組み建築物が、現在の建築基準法の求める耐震性を備える保障など有るのか?それがあると言える根拠は何か。

また、「震度7といわれる濃尾地震でも、旧名古屋城天守は持ちこたえた」と、あたかも木造天守震度7に耐えられると思わせるような誤認を、広く市民に与える記者が居るとするなら、その君の歪んだペンで、将来何人の被害者が生まれるのか考えた事は無いのか?と指摘したい。

2018-06-15 名古屋城についての事実確認と現状の推測(2)

名古屋市民で木造レプリカ天守がどの程度の震度に耐えるのか、知っている者はない。
それはなぜか、情報公開がなされていないからだ。
木造レプリカ天守の姿について、その実態が明らかになっていないからだ。

そのようなものに実施設計費や木材調達費を支払って良いものなのだろうか。

マスコミも危険なプロパガンダを流す暇があるのであれば、5mm程度は自分の脳みそを使って、伝えるべき事を市民に伝えるべきではないのか。