市民のための名古屋市会を! Ver.3.0

一人の名古屋市民が「地域委員会制度」「減税日本」に対する疑問をまとめるサイトです。(since 2011/3/3)

過てる財政論

河村市政の裏表

河村市政の裏表

  • 作者:
  • 発売日: 2014/05/16
  • メディア: 新書
 さて、本日(5月18日)最大のネタです。

 最近、ある方の言葉が心に響いた。
 「知性というものは、自分が誤り得る事を自覚しているかによる。自分のバカさ加減をどれほど自己評価できるか。これがその人物の知性の判定基準だろう」

 私はそもそも自分が無謬だなどとは思っていない。
 どんな批判も歓迎するつもりでいる。(コメント欄も書き込み自由でしょ)

 また、当ブログに掲載した記事は、一切削除しない。修正の際には修正個所が判るようにしている。(つまり自分のやらかしたバカは自戒の意味も込めてそのままにしている)

 いま読み返すと我ながら酷い文章も幾つもある。
 そもそも最初、地域委員会制度に違和感をもってブログを始めたわけだが、その頃は減税政策については判定ができなかった。(というか、そもそも経済学的な意味を考えていなかった)
 更にいうと、その頃は私は自分を「リバタリアン」と定義していた。(ちなみに、今はリベラル保守の立場が一番信憑性があると感じている)

 元々自由主義新自由主義市場原理主義、競争原理はあってしかるべきだという自論を持っていた。しかし、様々な議論を重ねるうちに新自由主義の誤り、Occupy WallStreet に代表される、新自由主義の見直し、富の再配分の必要性を感じるようになった。
 また、減税政策については麻生良文氏の「公共経済学」などを参考として、勉強させていただいた。
 「正しい経済学」が導く減税の意味(前編) - 市民のための名古屋市会を! Ver.3.0

 勿論、この本に行き着くまでには幾つも紆余曲折があった。その紆余曲折の中にはリチャード・クー氏の著作もあったわけだ。

 そもそも社会学の領分では「絶対の正解」は無いだろう。社会学は比較実験が不可能であって、推定は推定でしかない。更に経済学は要素が複雑に絡み合ているために、経済学的に明白に失政を打っても事態が好転する事もある。この社会が一台の車だとして、経済学というカーナビに目的地を打ち込もうとしても、その目的地が正しいかは傾向でしか語れそうもない。そして走行ルートを探るときに最も大切な「自分の車の位置」は凡その相対位置でしか語れない。(このカーナビの隠喩を微笑みをもって聞く人が幾人かは居るだろう。「自分の車の位置」がココだと断定できる人物は、最初に書いた「知性」に問題がある)

 河村市長が名古屋市長になってから今日まで、日本の社会がデフレにあった事は明白で、この際、積極財政を取る事が経済を刺激するに利する事は、このアベノミクスの一定の成功で正しいと断じても良いのではないか。そして、インフレが極度に進み、通貨流通を抑制しなければならないような状況に陥った際には、歳出の削減で原資を作るという世界でも類を見ない河村流減税政策にも出番があるかもしれない。

 (吉田さ〜ん、見てますか! あなたは知らなかったようですが、河村市長の減税政策を実施する際に、総務省から市債の追加発行を止められているのです。つまり、市債残高が減っているのは、単に減税政策を総務省に認めてもらうための結果論に過ぎない。
 そして、その間、歳出は削減されて名古屋市内の市中通貨供給量は抑制され、市内経済は冷却され続けているんですよ。この総務省の科した条件ぐらい承知して河村減税について語って欲しいね)

 おっと、本番の前に余計な事を。

 何をグダグダと語っているかと申しますと、行ってきたんですよ。昨年末から参加したいと要請していた湯川市議の市政報告会。

 http://yugawa-nagoya.jp/wp-content/uploads/2014/05/1405%E8%A1%A8.pdf

 本日(5月18日)午後2時より、日本ガイシフォーラム。
 講師が「吉田寛千葉商科大学大学院教授」だそうでね。*1

 ハッキリ言いましょう。

 ダメです。

 なんじゃこの人物。

 同時に「公会計研究所 代表」だそうです。

 HPがあった。
 http://www.catallaxy.jp/IPSA/Top.html

www.catallaxy.jp



 なんだろねぇ。
 「均衡財政と公会計」と来てみたり。
 M.サッチャー元英国首相と握手していたり。

 Kさんなら5秒で正体を見破りますよね。

 そうです、均衡財政論を語る新自由主義者です。

 そもそも経済学、財政論と公会計とはお話が違いますよね。
 そりゃ、会計学の先生が経済学的な傾向を持って良いというのは、お医者さんが踊りの名取りをとっても良いようなもので、会計学が判れば即ち経済学が、財政論が判るとは思えない。

 というか、今から本日私が聞いてきた奇妙奇天烈な財政論をご説明しますが、今に至るも自分自身が信じられませんな。どなたか、均衡財政論を信奉する方のご批判、ご指摘がいただければ幸甚です。(匿名で結構ですからね)

 さて、面白いのはこの吉田せんせ〜、話のイントロに「民」という漢字の成り立ちをお話しされたんですよね。まさかのネタかぶり。*2
 2014-05-07

 「民」という文字は、古代の中国において奴隷の目を針で刺して視力を奪った事による。後に目の見えない人のように物の判らない多くの人々、支配下に置かれる人々の意となる。

 吉田せんせ〜、としては聴衆に「自分の目で見、頭で考えなさいよ」とでも言いたかったのでしょうが、さて、結果はどうなりましたかね。

 それからまあ、色々とお話をされましたがたぶん、吉田せんせ〜、の言われたいことはこちらに集約されているんでしょうなぁ。

 専制君主によりコントロールされた課税権を市民がコントロールするのが民主主義です。
 市民革命の遺産は継承され現在も主権は、市民の手にあります。しかし、政府は肥大化しリバイアサン(強大な怪獣)とも呼ばれています。リバイアサンは市民の税により命を繋ぎます。リバイアサンをコントロールするためには、主権者が合理的な判断をしなければなりません。主権者が合理的な判断を行うために必要とされるのが公会計の提供する情報です。

http://www.catallaxy.jp/IPSA/she_lino_ci.html

 ホッブズだよ、17世紀だよ。おい。

 ルソーは居ない事にでもなっているのかよ、おい、こぇ〜よ。大丈夫かよ千葉商科大学

 しかし、どことなくどこかの市長と似たようなこと言っていますよね。
 一橋大学でもルソーは居ない事にでもなっているんですかね。

 更に、税についてフランス革命時の人権宣言が引かれたり*3、米国の独立時の課税に対する主張が引かれたりね。
 専制政治下の課税とか植民地の課税と、現代の課税をごっちゃにしてどうするんでしょうか。

 この吉田せんせ〜、に言わせると「課税」とは「略奪」だそうです。



 そこでこんな図が出てきたんですよ。
 吉田せんせ〜、がおっしゃるには、(穀物でも何でもいいでしょうが)生産が10あって、それが10消費できるとすると、その社会の「豊かさ」はこの色のついた三角形であらわされる面積と等しくなる。つまり、50の「豊かさ」がある。

 ところがここに2割の課税があるとする。吉田せんせ〜、は「略奪」と図に表記されていましたが*4
 すると、水色の部分は40に減ってしまうと。こう仰るんですよ。

 課税されると、略奪されると、その財は消えるのか?

 http://www.chikyumura.org/environmental/report/2013/07/12142318.html


 一般会計予算(国の歳出)はおおよそ、国の徴収した税に等しいですよね。
 つまり、税って大部分が国民の元に帰ってきます。

 革命以前のフランスや、独立以前の北米諸州とは違うんですから。

 確かに、生産した人々の「豊かさ」は50から40に減るでしょう。
 しかし、残りの10(赤い三角形の部分)は「再配分」され、社会的弱者や子どもたちへの教育、治安維持などに使われるわけで、それのどこが「略奪」と呼べるのでしょうか?(まあ、確かにガバナンスの問題はあるでしょうけど、それでもこの議論は粗雑にすぎませんか?)

 話の途中でフランス専制時代や植民地に対する課税と、現代の課税を混同した議論について異論を指摘したら「出て行け」といわれてしまいましたよ。

 黙っているからと居座っていたのですがこの図にはちょっと震えましたね。

 休憩時間に吉田せんせ〜、に「教えてください」と、こうした「再配分」について指摘し、違和感があると伝えると「議論はしたくない」ときた。
 はい来た。聞く耳持たないって態度ね。

 まったく批判に対して開かれていない。
 
 会場入り口で様々なパンフとともにこのマンガを配っていた。
 http://www.catallaxy.jp/IPSAStyle/manga.html

 上記のように批判したら、暫くして会場スタッフが近寄ってきて、このマンガを返してくれと来ました。吉田専制のご指示らしいです。吉田せんせ〜、アンタ最高だよ!

 この「子供にツケをまわさない!」という運動、均衡財政論の踏絵を振りまいているらしいのですが、その簡単な論理は。

 「子どもは課税に同意していない、よって子どもに課税する事は許されない」らしい。
 http://www.catallaxy.jp/IPSA/zi_youno_ben_zhi.html

 こちらにもあるけど、吉田せんせ〜、のドグマはどこまで行ってもホッブズ*5の自由に依っているようだ。

 じゃあさ、吉田せんせ〜、お伺いしますけどね、子どもに対する教育はどう理解すりゃあ良いんでやんしょうかね?親が子どもを養育する義務はこの社会でどう定義づけできるんですかい?そもそも課税に同意していない子どもは、じゃあ無税で結構です。その代わり、道路も水道も使えないって事ですかい?


 均衡財政論なんて端から破綻した議論なんですよ。

 同意しようがしまいが、一旦課税して小学校を建てたら、それは課税された世代(またはその子女だけ)が使用するわけではない。100年程度、およそ5世代程度は使われるわけでしょう。(私の出身小学校なんぞ150年ぐらい経っているんじゃないか)
 なら、建設時に100年償還の債券を発行して、債務を持っても(つまり、単年度はとんでもなく赤字/非均衡財政、文字通り「子どもにツケをまわして」も)各世代が利用するのだから何か問題ありますか?

 均衡すべき財政というのは単年度ではない。
 世代としての20年なのか、このような100年のスパンで良いのか。
 それは議論が有って良い。

 特に、日本は年齢別人口動態が2050年に向かって「厳しい」状態が続く。この残り20年ほどを「乗り越え」なければならない。本当であれば、バブルの頃にたくわえをすべきだった。人口動態に着目していた人々からは警告も出ていた、しかし社会はそれほど賢くなかった。あまった財を「ふるさと創生資金」などといって無駄に配ったりもした。
 そうした過剰流動性*6存在した時期もあった。


 しかし、いまの日本に単年度の均衡財政を守るのなんてのはナンセンスも甚だしい。
 少なくとも、人口動態がフラット、全世代が平均してから再考慮しましょう。


 さてさて、こんな吉田せんせ〜、の薫陶を受けて、我らが減税日本ゴヤの湯川市議は河村減税政策を評価してみようとしたらしい。

 まず、名古屋市の市債残高の推移を報告された。

 これは上にも書いたように、総務省からの制限で、市民税の課税基準を下げている場合、(つまり減税を実施している場合)新たな市債の発行は許されないので、結果として市債残高が減っているだけです。

 しかし、実はアセットマネジメント計画も止まっており、市営住宅などの立て替え等、市の公共財に対するメンテナンスは軒並み先送りされています。吉田せんせ〜、知ってた?
 http://www.city.nagoya.jp/zaisei/page/0000034317.html

 つまり、公会計に乗る債務は減少していますが、将来にわたって市民が負担すべき負債は、「老朽化した施設」という形で積みあがっているのです。*7

 果たして「民の目に針を刺しているのは誰なんでしょうかね!吉田せんせ〜、」

 更に、湯川市議は市民経済計算の市内総生産の数字が上がっている事から、減税の効果が認められると参加者に発表されていました。吉田せんせ〜、も「減税の効果があったという事だね」と同意をされていましたな。

 これについては「減税5%検証PT」が検証方針を立てているところですよね。
 市内総生産の数字は「アベノミクスの効果」によって全国的に経済が拡大しているために、減税の効果であるか判別がつかないのは当たり前です。

 ここで面白かったのですが、終了後湯川市議は「なぜ、市内総生産の数字を出してはいけないんですか、事実じゃありませんか」と仰っていましたね。私が「市内総生産の数字はアベノミクスによる全国的な景気回復の効果も考えられるので、減税だけの効果とは言えないでしょう」と言っても「しかし、市内総生産の数字は事実上がっているんですよ」と言われるので「だから、減税の効果を主張するのに市内総生産の推移を挙げても不確かじゃないですか」などと、延々水掛け論(?)に成っていました。

 前提を伴う推論ってできないのかね?


 更に、これも凄い話ですが。
 湯川市議は吉田せんせ〜、にご指導いただいて名古屋市営バスの赤字路線について調査したそうです。全186路線の内、採算が取れているのは28路線だそうで。

 で?
 「子どもにツケをまわさない!」
 「均衡財政論者」としてはどうするおつもりですか?


 「略奪」を生む、不採算の路線についてはすべてバスは廃止しますか。

 できるものならやってみろ!
 事実に立脚せず、民の目をくらまし、己の歪んだ世界観を押し付ける、
 まさに、鬼畜の所業!
(ここは、ハマカーン浜谷の声で読んでね はあと)



追記(2015/2/24):
 http://kojima-ichiro.net/tag/%E5%90%89%E7%94%B0%E5%AF%9B

*1:このはてな自動リンクシステムで「吉田寛」氏を引くとちょっと面白いね

*2:白川静さんの事を知っているのが変わった事のようにおっしゃってますが、私の周辺では常識なんですけどね

*3:それも第14条が引かれて、13条は無視されたり

*4:大丈夫か?千葉商科大学

*5:くどいようだが17世紀

*6:ふるさと創生資金の事を言っているのではなく、バブル一般

*7:公会計が施策全般を表すという吉田せんせ〜、のご主張は崩れ去りましたな